※本稿は、大槻智之『働きやすさこそ最強の成長戦略である』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
不快に思うかどうかの判断基準は自分ではなく相手にある
「俺が若いころは……」
なんて、言葉が口癖の人は要注意です。パワハラを悪気なく引き起こしてしまうタイプでしょう。パワハラの原因の多くが「俺的にはセーフ」「私の感覚では問題ない」という考えに起因するといいます。加害者となった方の多くが「自分もそうやって育てられた」と発言するように、根本には「若い子を育てたい」という前向きな発想があるのですが、そのやり方が現代の職場では通用しないことが多いのです。
これはセクハラも同様です。不快に思うかどうかの判断基準は自分ではなく相手にあることを忘れてはいけません。自身にとっては過去に努力した経験が今の財産であったとしても、同じことを部下にさせるとハラスメントになってしまうことがあるのです。
気心知れた同僚への発言を第三者が不快に思うこともある
「ええっ‼ 彼女は関係ないのにあれがセクハラだって⁉」
思わず大声で叫んだのは営業部のAさん(35歳)。人事部長に呼び出され、「社内の懇親会の行為がセクハラに当たる」といわれたのがその理由でした。Aさんは「お酒の席とはいえ、社内の飲み会であることはわきまえています」といい、「セクハラを指摘されるような言動は記憶にありません」とキッパリと否定したそうです。
しかし、人事部長は「Bさんに『お前の胸があと5センチ大きければすぐに彼氏ができるのにな』といったそうだね」と返します。すると、Aさんは「はい、確かにいいました。でも、Bとは同期入社でお互いに冗談をいい合える間柄です。いつも同期の飲み会では鉄板のネタです。Bがそんなこというなんて信じられません。だって……」と。そこで、人事部長は話をさえぎるようにこう告げました。
「セクハラを訴えているのはBさんじゃないんだよ。それを聞いていたCさんからだ」
こうして冒頭のように、Aさんは思わず叫んでしまったのでした。
Aさんとしては「お前の胸が……」というセリフがセクハラなのは理解していたそうですが、「信頼関係がある相手を選んで発言した」ので問題にならないと思っていたそうです。しかし、Aさんから直接いわれたわけではなくとも、それを隣で聞いていたCさんが不快に感じて、人事部にセクハラだと訴え出たそうです。いくら「気心が知れている」「合意の下だ」なんていっても、TPOをわきまえないとセクハラ認定されてしまうのです。
このように、ハラスメントは当事者だけではなく、第三者からも訴えられることがあります。実際に、自分に対してではなく、同僚に怒鳴り散らしている上司を見て体調を崩し、パワハラを訴え出た事例もあります。