LINEを連絡ツールとして利用する職場で、いじめやパワハラなどのトラブルが起きることがある。特定社会保険労務士の大槻智之さんは「LINEの“ノリ”には人によって温度差がある。業務利用するのであれば、業務時間外には使わないなどのルールを定めるべきだ」という――。

※本稿は、大槻智之『働きやすさこそ最強の成長戦略である』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

スマートフォンの画面を見て怒る女性
写真=iStock.com/fizkes
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社長が書き込むと社員が一斉に「勉強になります!」

「スタンプが嵐のように押されると正直しんどいです」

Hさんはうんざりした表情で語り始めました。「まだ立ち上げて3年にも満たないベンチャー企業ですから社長との距離が近すぎるんですよね」。

Hさんが勤めるのは東京都港区にある社員数20人のIT企業。業績の伸びに伴い、社員のうち10人以上はここ1年以内に入社したばかりで、Hさんもそのうちの1人です。入社してまもなくアプリ開発のチームに配属されたHさんは、上司からLINEのIDを求められ、ほどなくしてチームのLINEグループに入れられたそうです。

この会社には会社全体に加えて、チームごとにLINEのグループが設定され、社長以下の役員3人はすべてのLINEグループに入っているそうです。「業務としてルールを決めて使う分には非常に効果的だと思うんですよね」とHさんもLINEグループをツールとして評価しています。ただ、「盛り上がりすぎなのが自分にはつらいんです」。

それは、社長の書き込みに対するみんなの反応。「社長が何か書き込みをすると、深夜であっても「さすがです!」「勉強になります!」「ついていきます!」といった書き込みが一斉に始まるんですよ……。全体グループにもなると、書き込み数も多いので、『自分も何か書かなくては』と思うとしんどいです。スタンプがひっきりなしに入ることもあり、正直、今後ついていく自信がありません」。

「LINEいじめ」は職場でも起こりうる

LINEの“ノリ”は人によって温度差があるため、時としてそれがトラブルに発展してしまうことも考えられます。今後、Hさんがこの会社でやって行くためにはこういった“ノリ”と上手に付き合う必要がありそうです。Hさんのケースよりもずっと行き過ぎてしまうと、いわゆる“ハラスメント”を引き起こす温床となってしまいます。

「LINEいじめ」という問題が中高生を中心に話題になることがありますが、何も子どもだけの問題ではありません。職場でもLINEいじめは起こりうるのです。