年間100件以上の離婚や男女問題の相談を受けてきた
私は、弁護士として、離婚事件や男女関係の問題をよく取り扱っており、年間100件以上の離婚や男女問題のご相談を承っております。その経験から、読者の皆様に少しでも有益となることをお伝えできればと思います。
今回のテーマは、「配偶者(夫または妻)が不倫をしたことが発覚したが、何かしらの事情で離婚はしたくないため、慰謝料請求のみを行いたい」というケースについて、お話ししたいと思います。
不貞行為が発覚したけれども、子どものことを考えると離婚はできない、今後の生活が不安で離婚に踏み切れない、まだ相手のことを愛している……など、さまざまな理由から、離婚に踏み切れないというケースはあります。その場合の注意点について、お話しします。
離婚をしなくても慰謝料請求はできる
まず、婚姻期間中に不貞行為が行われた場合、不貞が行われた配偶者は、不貞を行った配偶者(不貞配偶者)及び不貞相手(愛人などの第三者)に対して、不法行為(民法709条または719条1項)に基づく慰謝料請求を行うことができます。不貞配偶者か、不貞相手か、いずれか一方のみに対して請求することもできますし、両方に対して請求することもできます(ただし、両方に対して請求したとしても、2倍の金額が認められるわけではありません)。
そして、そのことは、離婚しているか否かには関係がありません。そのため、離婚をしていたとしても、離婚をしていなかったとしても、不貞配偶者に対しても、不貞相手に対しても、原則として、慰謝料が認められることになります。
ただし、離婚した場合に比べると、どうしても慰謝料額は低くなる傾向にあります。
不貞の慰謝料額は、婚姻期間の長さ、不貞期間の長さ、未成年の子の有無、不貞行為発覚後の事情など、さまざまな要素をもとに決められますが、その判断要素の1つに、「婚姻関係が継続しているか、破綻しているか」というものがあります。「破綻」というのは、必ずしも離婚していることに限られず、不貞行為をきっかけに別居に至ったなどのケースも含まれますが、不貞行為が行われたが、同居を継続して婚姻関係も継続している(または、いったん別居に至ったけれど、同居を再開した)ケースなどの場合、慰謝料の減額の要素として捉えられます。