婚姻関係を継続していると慰謝料額が下がる可能性がある

不貞の慰謝料額は、通常、100~300万円と言われますが、近年では、150~200万円前後になることが多いと思います。そこを一つの基準として、より悪質であれば増額され、逆に損害が大きくないとされてしまったら減額されます。

慰謝料の額は、個別の事情によっても変わりますが、担当した裁判官によっても異なります。不貞行為に厳しい裁判官に当たれば慰謝料は高額になりますし、そうではない裁判官に当たれば低額になります(ただし、一定の幅の範囲内ではあります)。そのため、事前に正確に見通すことは難しく、また、1つの事情で決まるわけではありませんが、婚姻関係が継続しているということは、減額の要素として捉える裁判官が多いと思います。そのため、婚姻関係を継続している場合は、慰謝料額としては、下がる可能性があります。以下では、裁判例をご紹介します。

家族の概念
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同居を継続していた3つの例

① 東京地判平成29年11月29日(平成28年(ワ)第42067号):75万円(弁護士費用含む)

まず、東京地判平成29年11月29日では、婚姻から不貞行為までが約3年、子ども1人、不貞行為が行われた期間が約2カ月程度という事案で、同居を継続しており、不貞行為発覚前と状況が変わっていなかったことから、慰謝料額は75万円(弁護士費用含む)とされています(なお、同事案は、妻がキャバクラで働いており、妻が店の客と不貞行為を行った事案でした)。

② 東京地判平成30年2月27日(平成29年(ワ)第1067号):120万円

次に、東京地判平成30年2月27日においては、不貞行為までの婚姻期間が約2年3カ月で、不貞行為が行われた期間は、途中に間は空くものの、約1年2カ月程度であり、子どもが1人いたという事案で、いったん別居したものの、約2カ月程度で同居を再開し、夫婦関係の再構築に向けて努力しているということが認定されて、慰謝料額は120万円とされました。

③ 東京地判平成30年3月1日(平成29年(ワ)第19968号):40万円

東京地判平成30年3月1日においては、不貞行為までの婚姻期間が約8年で、不貞行為が1回であり、子どもが1人、離婚には至っていないという事案で、慰謝料額は40万円(これとは別に弁護士費用が4万円)とされました。

「不貞相手の子を2人出産した妻」の慰謝料は200万円だった

④ 東京地判平成29年11月29日(平成28年(ワ)第16219号):200万円

他方、東京地判平成29年11月29日においては、不貞行為までの婚姻期間が約5年、不貞行為が行われた期間が約3年という事案で、婚姻関係は継続しているものの、慰謝料額としては200万円が認められています。ただし、同事案は、妻が不貞行為を行った事案でしたが、妻が不貞相手との子を2人も妊娠し、出産するという事態にまで至っているため、そのことが重視されて増額されたものと思われ、婚姻関係を継続していることは決定的事由ではなかったものと思われます。

このように、婚姻関係が継続していることは、一般的には、減額事由として考慮されることが多くあります。このことを念頭においた上で、婚姻関係を継続するか否かを検討された方がいいと思います。