まったく掃除をせず、自宅をゴミ屋敷化してしまう妻との離婚は可能なのか。離婚・男女問題に詳しい弁護士の堀井亜生さんは「結婚生活が続けられないほど家を汚くしている場合は、部屋の状態を表す写真や、何度注意しても改善されなかったことを立証する証拠が必要になる」という――。
※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。
家庭用ゴミの集積所
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです

現実は想像を超えていた

会社員のAさん(40歳)は、結婚して8年になる専業主婦の妻と、7歳の長女と3人で、マンションに暮らしていました。

Aさんには長年の悩みがありました。妻が掃除や片付けを全くしないことです。

結婚前、妻は「家事が苦手だ」と言っていましたが、Aさんは家事全般が好きな方なので、休みの日に気晴らしがてら手伝えばいいと思って結婚しました。

しかし、現実は想像を超えていました。妻は料理も洗濯も掃除も全くしないのです。

惣菜を買ってきてパックのまま食卓に並べるのは良いとしても、使い終えたパックはごみ箱に捨てず、テーブルの上に出しっぱなしにします。テーブルの上に置き場がなくなったらキッチンに置き、そこもいっぱいになったらソファの上に……と、際限なくごみが増えていくのです。

リビングの床には使い終わったティッシュが散乱し、子どもが飲んだジュースのパック、飲みかけのペットボトル、いつ読んだかわからない雑誌、チラシなどが落ちていて、足の踏み場もないほどです。

洗濯もしないので、洗濯機の上や洗濯かごに、脱いだ服や下着が山積みになっており、Aさんが洗濯するまでそのままになっています。妻は、着られる服がなくなったら、脱ぎ捨てた服からまだ着られそうな服を引っ張り出して着ています。

片付けると怒る妻

Aさんは子どものためにも帰宅後や土日に、できる限り家事をしていましたが、妻はそれに対して怒るのです。食べたあとの惣菜パックを捨てようとしたら「まだ使えるかもしれないのに」と怒り、数日放置されているジュースのパックも「まだ飲んでいる途中だ」と言います。

それを無視してAさんが片づけて出かけても、帰宅すると元の通り散らかっています。

片づけについてもそんな調子なので、満足に掃除をすることができず、家はいつもほこりが舞っていました。リビングや台所には悪臭が漂っていて、虫が湧くこともあります。トイレもめったに流さないので、その臭いも強烈でした。

妻は風呂に入るのも嫌いで、長女もほとんど風呂に入れていません。夫が長女を風呂に入れようとすると、「風呂に入れると免疫が下がって体が弱くなる」と妻に怒鳴られることもありました。