周りに相談しても理解されない

もともときれい好きだったAさんですが、妻と結婚してから、咳が止まらなくなりました。「自分1人で掃除をするのも限界だから、少しだけでもやってほしい。せめてごみはごみ箱に捨ててほしい」と何度も頼みましたが、「私はちゃんとやっている」と取り合ってもらえません。

ネットで、「片付けられない病気」についての記事を読み、妻に精神科での治療を勧めたこともありましたが、その時も「私を病気扱いするのか」とひどく怒鳴られました。

学生時代の友人や会社の同僚にもたびたび相談しましたが、「自分で掃除すればいいじゃないか」「うちの妻も家事は苦手だよ」と笑われるだけなので、自分が我慢するしかないと思っていました。

風呂に入らず、片付けができない娘

そんなある日、長女の担任からAさんのところに、面談をしたいという連絡がありました。

学校に行くと、「長女が同級生からいじめのようなことをされている」と告げられました。

そして担任は、「非常に申し上げにくいのですが……」と言葉を濁しながら、「周りの子どもたちが娘さんのことを『臭い』と言っているのです。失礼ですが、お風呂にちゃんと入れているんでしょうか」と話しました。

「(長女のことを)『臭い』と言う子どもたちに対して注意はしているが、家庭でも気を付けてあげてほしい。お母さんには何度か伝えているが、あまり関心がなさそうなのでお父さんにも来てもらいました」と言うのです。

話が終わると担任は、教室の長女の机の中を見せてくれました。プリントがぎっしり入っていて、牛乳のパックや文房具が詰め込まれています。

Aさんは、長女のためにもこのままではいけないと思うようになりました。

「掃除をしないぐらいじゃ離婚できません」

妻に対してはできる限りの改善を試みてきましたが、Aさん自身の心も体も限界を迎えていました。そこでもう離婚しかないと考えて、弁護士に相談に行きました。

ところが、どこの弁護士も「掃除をしないぐらいじゃ離婚できませんよ」と言います。「あなたが片付ければいいじゃないですか」「娘さんが大きくなったら手伝ってくれるんじゃないですか」と笑った弁護士もいて、Aさんは「自分が悪いのか」とますます悩むようになってしまいました。

そうして数軒目の法律相談で、Aさんは私の事務所にいらっしゃいました。

Aさんは事情を説明した後、「どこに相談しても離婚はできないと言われたので、写真を撮ってみました」と言いました。

家の写真を見て、私は驚きました。いわゆる「ごみ屋敷」そのものだったのです。

離婚届と指輪と印鑑と朱肉
写真=iStock.com/takasuu
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