人間関係をこじらせる「無意識の思い込み」

短い会話の中でも、「一般的に」「若い世代は」「普通は」など、上司が自分の価値観を押しつけ、相手を追い詰めるリスクのある言葉が登場します。しかも言葉を発した上司は、それがまさか相手を追い詰める言葉になるとは、思っていません。なぜなら、自分の価値感が“一般的”で、“自分の世代”から見ると“普通”だと思い込んでいるから気づかないのです。

「一般的に」といっても、何を指して一般的とするかは人によって解釈が異なります。「若い世代」といっても、ひとくくりにはできず実際は人それぞれです。「普通は」という言葉は“自分の価値感の中で”に置き換えられるだけで、本当に全員を標準にしているかは別問題です。

このように、無意識のうちに偏った思考に基づく言葉や行動のことを「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」と呼びます。

他にも「平均的には○○」「みんな○○」など知らず知らずのうちに発してしまっていることはないでしょうか?

一度、思い込んでしまうと頭の中はバイアスでいっぱいになり、他の見方や解釈ができないまま、怒りとともに他人を攻撃してしまうリスクもあります。いじめ、夫婦喧嘩、各種ハラスメント、風通しの悪い組織風土、これらの原因の一端はアンコンシャス・バイアスにあるといっても過言ではありません。

いい上司は「ヒトを責めずにコトを改める」

アンコンシャス・バイアスにとらわれた言葉で、相手の状況や意図を確認せず人を責めてしまうことは、特に社会経験が少ない新入社員を追い詰めることにつながりかねないので細心の注意が必要です。

そこで、根本的に物の見方を逆転させてほしいのです。

「ヒトを責めずにコトを改める」ことです。ヒトに着目してしまうと、アンコンシャス・バイアスにとらわれたまま感情が入るため、頭の中でマイナスの気持ちが膨れ上がることもあるでしょう。ところが、ヒトそのものではなく、起きた「コト」に着目すると理性が働き現実だけを見やすくなるのです。

「ヒト」に着目すると感情的に、「コト」に着目すると理性的にものごとを判断できる。

これが私の持論です。ヒトとコトへの着目の仕方を切り替えるだけで、ヒートアップするあなたの頭は余裕を取り戻すことができるでしょう。