苦しい時に出るノルアドレナリンは強力

「つらい体験」「苦しい体験」は、勝手に記憶に残ります。苦しいときに分泌される脳内物質、ノルアドレナリンは、記憶増強作用がものすごく高いからです。

あなたが上司に叱られた体験。それが数カ月前のものでも、いまだに「失敗体験」を引っ張っているのは、不安と恐怖とともに分泌されるノルアドレナリンの影響です。

アウトプットの記憶増強効果は、非常に絶大です。

たとえば昼間、「上司に叱られた」という「ものすごく嫌な体験」(ネガティブ体験)をしましたが、会社の帰りに、映画を見て「すごくおもしろかった!」(ポジティブ体験)という体験をしたとします。

「ネガティブな体験」を消し去る、とっておきのワザ

この時点ではまだ、脳に対するインパクトは、ネガティブ体験のほうが強烈なのです。だから、そのまま布団に入ると、布団の中で「上司に怒られた嫌な記憶」が蘇り、「寝る直前に考えたことは強烈に記憶される」という脳の法則によって、何カ月も忘れられなくなるのです。

樺沢紫苑『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』(きずな出版)

だから、「おもしろい映画」を見たら、アウトプットとします。

「今日見た映画、最高におもしろかった!」と家族に話す。友達、恋人に電話で話す、メッセージで伝える。できれば、その映画の感想を短文でもいいので文章に書いて、SNSに投稿する。

そうすると、「何度も使われた記憶を脳は保存する法則」……アウトプットの記憶増強効果によって、脳の中ではネガティブ体験よりも、ポジティブ体験のインパクトが強まります。

寝る直前に、「ああ、今日はおもしろい映画を見た、とても良い1日だった」と思いながら寝ると幸せな気持ちで、深い睡眠に入れます。

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