感情を「言葉」に置き換える「言語化」能力

「話す」「書く」「行動する」。アウトプットによって、さまざまな能力が鍛えられます。アウトプットは最強の脳トレと言えますが、数ある能力の中でも、私がもっとも注目するのは、アウトプットによって「言語化」能力が鍛えられることです。

言語化とは、言葉で表現すること。感情や直感的なものを、「言葉」に置き換えることによって、説明、伝達可能にすることです。

「言語化」というのは一般的な会話でも使われますが、実は心理学の用語でもあります。

心理学では、患者(クライアント)さんが心の中に抱えていた漠然とした感情、思いを言葉にすることを「言語化」といいます。カウンセリングや治癒のプロセスにおいて極めて重要です。

カウンセリング
写真=iStock.com/Yue_
※写真はイメージです

「言葉で説明できる」=「不安の正体、原因が見える」

「言葉で説明できる」ということは、「客観的に認識できた」ということ。つまり、一気に対応、対処、解決可能となるのです。

たとえば、原因不明でとらえどころのない「漠然とした不安」について、合理的に対応、対処することは困難です。いつ、どういうシチュエーションで不安は起きるのか。不安は、何分続くのか。どういう状況で不安は軽減するのか。

それらを、1つ1つ言葉にしていくと、不安の正体、すなわち原因が見えてきます。その先にあるのは、「安心」です。

体調不良、メンタル不調の早期発見も可能に

ちなみに、精神科の患者さんは、言語化能力がとぼしい人がほとんどです。つまり、「言語化能力が乏しい」→「理論、理性的に考えるのが苦手」→「感情に流されやすい」→「対応できない」ということになります。

言語化能力は、「観察能力」「自己分析能力」であり、「説明能力」「論理的思考力」そのものと言ってもいい。言語化能力が高い人は、「現実認識能力」が高い。つまり、今何が起こっているのかを、冷静に客観的に中立に捉えられるということ。

毎日、日記を書いて、言語化能力を磨いていく。そうすれば自分の「悩み」や「ストレス」の正体を自分で分析できるし、体調不良、メンタル不調も、ごく軽微な状態で発見できる。メンタル疾患の最大の予防です。

また、言語化能力が高いということは、「失敗した原因を言葉で説明できる」ということ。つまり、フィードバック力が高い。つまり、修正力が高いということ。きちんとフィードバックできていれば、同じ失敗を二度と繰り返すことはありません。失敗を経験に変えていけば、失敗するごとに飛躍的に成長していくのです。