繰り返し登場する「ジャングル」というフレーズ

「ミラクルショッピング」のすべての歌詞は、知らないかたがほとんどだと思います。しかしその歌詞を読み解いていくと、ドンキの特徴があきらかになっていくのです。ここからは、そんな「ミラクルショッピング」の歌詞に登場するフレーズに着目していきます。

最初に注目するのは、「ジャングル」という言葉です。曲中では「ボリューム満点 激安ジャングル(ジャングルだー!)」というフレーズが繰り返され、店名の次に多く出てくる単語です。実際に、ドンキの店内をよく見ると、「ジャングル」という言葉にふさわしく、緑の造花のツタがしげっています(これは、「ジャングル・ディスプレイ」と呼ばれています)。

しかし、「ジャングル」という言葉はふつうの小売店にはふさわしくないように感じませんか。あなたの近所のコンビニやスーパー、あるいはドラッグストアなどを想像してみてください。それらの店内は見通しがよく、棚が整頓されています。そのため目的の商品を、一直線で見つけに行けることがほとんどです。

なぜ、そのような店内構造になっているのか。見通しがいいほうが、効率よく買い物ができるからです。そのことからも、うっそうとして雑多で見通しの悪いイメージの「ジャングル」という言葉は小売店にはそぐわないように思えます。それでも、ドンキはあえてこの言葉をテーマソングのなかに入れています。

なぜ「ジャングル」という言葉を使うのか

なぜ「ミラクルショッピング」は「ジャングル」という言葉を使うのでしょうか。

その答えとしてまず考えられるのは、ドンキの店内の通路が非常に複雑で、「ジャングル」のようだ、ということです。イラストで、いくつかのドンキの店内マップを見てみましょう。

図表1は、ドンキの旗艦店の一つである新宿歌舞伎町店の店内マップです。通路が曲がっていたり、それぞれの売り場が四角く区切られていないことがわかると思います。ふつうのコンビニやスーパーに比べると、非常に複雑で、わかりづらい通路です。

ほかの店舗の店内マップも見てみましょう。

図表2は東京都練馬区にあるドンキ練馬店。面積の計算をするのがとても難しそうなほど複雑で、サーキットを思わせる曲線が印象的です。

MEGAドンキ立川店(図表3)。

まず、売り場の形が非常に細長い。そもそも、この土地でなにかを売るのが大変なのではないかと思わされます。ここでも、店舗の通路はぐにゃぐにゃと曲がっていることがわかるでしょう。

店内マップでは、通路の配置はかろうじてわかりますが、実際に店舗のなかに立つと、もはや商品に囲まれて店内がまったく見通せない。完全に迷子になるわけです。僕自身、幾度となくドンキで迷子になり、階段やエスカレーターの位置がわからなくなったことがありました。