ドン・キホーテの店内BGMでは、店名の次に「ジャングル」という言葉が多く使われている。なぜそんな言い方をしているのか。ライターの谷頭和希さんは「ドンキの店内は見通しが悪く通路が狭い。それは買い物客に衝動買いをさせることを狙っているからだ」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、谷頭和希『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社新書)の一部を再編集したものです。

大阪のドン・キホーテ
写真=iStock.com/TkKurikawa
※写真はイメージです

コロナ禍でも32期連続増収を達成したドン・キホーテ

ドン・キホーテを運営するPPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)は、2021年6月に創業から32期連続増収という、企業としては驚異的な記録を達成しました。

ドンキの強みは、外国人観光客向け需要(インバウンド需要)ですが、新型コロナウイルスの影響で外国人旅行客は大幅に減少。ドンキのみならずさまざまな小売店がその影響を被っただけに、このニュースは小売業界を驚かせたに違いありません。グループの店舗数を見てみると、2017年には総店舗数400店舗を突破。2021年12月21日の時点で、国内594店舗、国外92店舗の計686店舗を展開しています。

ドンキの公式サイトを見れば、ほぼ、毎月2店舗ずつのペースで新規出店が増えていることがわかります。その安定的な業績傾向は、近年、コロナ禍で業績が落ち込む他のチェーンストアに比べると際立つかもしれません。

テーマソングの歌詞からひも解く「ドンキの秘密」

本稿では、店舗の通路の形や、内装、商品など、ドンキの「内側」についての話題を扱います。このとき考えたいのが、ドンキのテーマソング「Miracle Shopping(ミラクルショッピング)」です。どの店舗でもループで流れている曲で、「ドン ドン ドン ドンキ ドン・キホーテ」というように店名を繰り返し歌う、軽快なメロディの曲です。BPM(1分あたりの拍数)は170ぐらいで、かなりのアップテンポ。購買欲をそそるようにハイテンポな曲にした、という話もあります。

この曲は、ドンキの元社員で、現在は経営コンサルタントを務めている田中マイミが作詞・作曲をしました。ちなみに、田中のオフィシャルYouTubeチャンネルではダンスつきの完全版「ミラクルショッピング」が公開されているので、ぜひ聴きながら読み進めてみてください。

じつは「ミラクルショッピング」の歌詞をよく見ていくと、ドンキの店舗の形や内装、そして商品の特徴がとてもよくわかるのです。このテーマソングに導かれて、ドンキの店内に入っていきましょう。