空間の使い方が正反対なドンキとコストコ

こう単純化してしまうと、コンビニやスーパーとほとんど同じように見えますし、実際、空間の作りかたはコンビニやスーパーと似ているでしょう。でも、恐ろしいのはその規模です。

オレゴン州のコストコ
写真=iStock.com/artran
※写真はイメージです

私は初めてコストコに行ったときに、あまりの巨大さに驚いてしまいました。コンビニやスーパーを徹底させていくと、このような姿になるのか、と。そして、この姿はドンキとは正反対だな、とも考えました。どちらが小売店として優れているのか、という話ではなく、事実としてまったく異なる空間の使いかた(空間秩序)をしているのです。

じつは、コストコ的な空間の使いかたはアメリカ型の小売店に多い特徴だともいえます。そもそも、スーパーマーケットという業態は、日本でダイエーを創業した中内㓛がアメリカ型の小売店にならって作ったものです。店内構造の面から見れば、日本のスーパーマーケットを「コストコのミニサイズ版」ととらえてもいいでしょう。

また、ネット通販サイトAmazonの巨大な倉庫もコストコのようなアメリカの小売店に近い空間の使いかたをしています。Amazonは、顧客から注文が入ると、その商品を倉庫から取り出して注文者のところに届けるわけですが、その倉庫はグリッド状の通路にぎっしりと商品が並べられています。

それだけではなく、商品にはそれぞれコードが割り振られ、顧客が注文した商品の場所へすぐに向かえるようになっている。その空間は、コストコやスーパーの空間との近さを感じさせます。一つにくくってしまうことは危険なのですが、やはりコストコもスーパーもAmazonも、アメリカ発祥の小売システムであるところが大きいのではないかと思います。

ドンキの店舗構造に貫かれた「曲線の美学」

いずれにしても、それらの空間では「ここに行きたい」と思ったところに一直線で行くことができます。しかし、ドンキはそうもいかない。

先ほどの店内マップを思い出してみてください。あるコーナーに行きたいと思っても、なかなか難しい。実際、店内マップで描かれている通路のほかにも、たくさんの小さな通路が通っており、目的地まで一直線で行くことは非常に難しいのです。商品が高く積まれていることから生まれる見通しの悪さ、そして店内の曲線通路の多さが、目的地まで一直線に行くことを阻んでいるのです。

コストコのような空間が、直線を店舗構造の美徳にしているのだとすれば、やはりドンキは「曲線の美学」、とでも呼びたくなるような店舗構造を持っているといえるでしょう。

ここまで、スーパーやコンビニ、コストコとの比較を通して、ドンキの店内が複雑で不合理な店舗構造を持っていることを説明してきました。「ミラクルショッピング」のなかにある「ジャングル」というフレーズは、そのことを表しているのではないか。わざわざ説明しなくても、ドンキに行ったことがある人ならばなんとなくイメージできるのではないかと思います。