小売店ドン・キホーテは、ネットでは「ヤンキーのたまり場」というイメージで言及されやすい。なぜそうなったのか。ライターの谷頭和希さんは「テレビ番組や人気ロックバンドの楽曲などを通じて、『ドンキの前に溜まったヤンキー』という共通イメージが広がっていった。ただ、それは実状を反映しているとはいえない」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、谷頭和希『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社新書)の一部を再編集したものです。

ドン・キホーテ手稲店
ドン・キホーテ手稲店(写真=RJD/PD-self/Wikimedia Commons

ドンキは都市のなかでどのような存在だったのか

ドンキを語るうえで欠かせないのは、ドンキとその周りにある場所の関係です。ドンキは都市のなかでは異質であるかのように見えるけれども、じつは周辺の都市を非常に敏感に感じ取り反映しているのではないか(ただし、その多様性は、ドンキが企業として利益を追求する過程で自然に生まれたものです)。

そこで本稿では、これまでの議論から見えてきた「都市のなかのドンキ」というポイントに焦点を絞って話をしていきたいと思います。

そのときに、テーマとしたいのが「ヤンキー」です。ヤンキーとは、不良行為を行う少年少女全般を指します。なぜヤンキーを取り上げるのか。それは、ドンキと結びつけて語られやすい存在だからです。『週刊東洋経済』のドンキ特集号の表紙に書かれた言葉を引いてみましょう。

かつて「ヤンキーのたまり場」でもあったドン・キホーテ。総合スーパーへの居抜き出店などで生鮮食品中心の店舗が急増し、客層は拡大。海外出店も加速中だ。
(『週刊東洋経済』2019年3月30日号)

ここには、ドンキが都市のなかでどう位置づけられていたのか、その変遷がわかりやすくまとめられています。かつてのドンキといえば、「ヤンキーのたまり場」だったのです。実際、ある時期のドンキにヤンキーが多く集まっていたことは事実として指摘できるでしょう。

ドンキが全国に広がり始めたころ、その出店場所の多くは国道沿いでした。ドンキの一つのウリが「深夜営業」です。ドンキのようになんでも揃っていて深夜まで営業している店は当時珍しかったため、夜に車やバイクで集まってきたヤンキーたちが国道に渋滞を作ったというエピソードもあるぐらいです。

これから述べるように、こうしたヤンキーとの結びつきは、現実には年々弱まってきているのですが、現在でもドンキとヤンキーはイメージとして強い結びつきを持っているようです。