励ましがプレッシャーに

(2)「このつらさを乗り越えたら成長できるから」

これも一見、聞こえのいい言葉です。励まされている気もしますし、これで頑張れる人もいるかもしれません。言っている方も、まったく悪気はないかもしれません。しかし、これを聞いた部下のなかには、「じゃあ、このつらさを乗り越えられなければ、成長できないダメな人間ということになるのか」と受け取り、プレッシャーを感じてしまう人もいるのです。

こういった言葉を簡単に口にしてしまう上司は、おそらく過去にいろいろなことを乗り越えてきた優秀な人、仕事ができる人なのでしょう。だからこそ、上司になれたのかもしれません。しかしその一方で、部下のキャパシティや得手不得手、プレッシャーやストレスへの耐性がどれくらいなのかについて、考えが及ばない上司がたくさんいます。「自分ができたのだから、この部下もできるだろう」と、ふつうに思ってしまいます。まだ自分ほどには力を持っていない人たちに対する、想像力や共感力が欠けているわけです。

こうした、想像力が欠けた上司にあたってしまうと、部下としては非常につらい。自分の許容範囲の限界に達していて、これ以上はもう頑張れないほどなのに、上司の方では、それ以上に頑張って乗り越えるのが当たり前だと思っている。部下の逃げ道をふさいでしまい、メンタルヘルスの面でもちょっと危険です。

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常に自分の状態を把握しておく

対策は、まず自分の心身の状況を把握し、キャパオーバーになっていないか常に気を付けておくことです。このタイプの上司は、悪気があって言っているわけではないので、相手を変えるのは難しい。自分の受け止め方を変えるしかありません。

常に、自分がどれくらいストレスを感じているかを把握し、いつアクセルを踏み、いつブレーキを踏むのか、自分で判断しましょう。

その判断基準となるのが「食べる」「寝る」「遊ぶ」の3つです。食欲が湧かない、反対に過食になっている、夜になっても全然寝つけない、眠りが浅くて夜中に目が覚めてしまう、遊びに行く気がしない、または遊びに行っても全然楽しくない、普段の状態と比べて、そういった変化が起きていると感じたときは、ブレーキを踏むべきときです。

上司が想像力欠如型の場合は、決して励ましの言葉に流されず、自分の体調を優先させてください。この手の上司は熱心で真面目な人が多いので、自分で行動を起こさないと、休むことすら難しくなります。「期待には応えられそうにありません。ちょっと体調が悪いので休ませてください」と伝えないと、ますます調子が悪くなってしまいます。すでに体調をくずして仕事に影響が出ているなら、躊躇なく精神科や心療内科の扉を叩いてください。