「編み物が趣味の体育会系男子」就活で面接官がイチコロの“ギャップ”
例えば、あなたはどちらの学生に会いたいでしょうか(これらはすべて実在する学生です)。
A バリバリの体育会男子。工事現場でバイトし、海外にラグビー留学しました。
B バリバリの体育会男子。編み物が趣味で先生もする、デジタル機器を使いこなしユーチューバーをしています。
あるいはこれは?
A ESSサークルに所属、バイトは英語の家庭教師。街おこしのゼミ長で、地方の商店街を盛り上げました。
B ESSサークルに所属、津軽三味線の普及活動。工事現場で男性に交じってバイトをしていたら、20人を束ねる現場監督になっちゃいました。
おそらくどちらもBを選ぶでしょう。
最初の学生は、Aが体育会の話題のみに終始しているのに対し、Bは意外な趣味でギャップをつくり、デジタル方面にも明るいことをアピールしています。
もう一人の学生は、Aが優等生的にありがちなバイトやゼミの話をしているのに対し、Bは英語と日本文化のギャップ、そしてさりげなくリーダーとしての統率力と体力がアピールできています。
タネを明かすと、AもBも、同じ学生から出てきた3本柱なのです。つまり指導によって、本人たちが「これはアピールするような要素ではない」と思っていたことを拾い上げ、掘り下げてもらい、Bの3本柱をつくっていったのです。
ちなみにこの男女の学生は、どちらも志望業界のトップ企業に内定をもらいました。
就活指導は、このように他者に客観的に自分を見てもらい、見落としていたり、埋もれていた要素を引き上げることが大事です。
そして3本柱に選んだエピソード以外のものも捨てる必要はありません。履歴書、あるいはエントリーシートの「趣味」「特技」などの別欄にちりばめましょう。
少しこなれた面接官だと、事前に用意したものではなく、その場でのアドリブ力を期待して「その3つ以外に何かありますか?」とカマをかけてくる時があります。そうしたら心の中でほくそ笑んで、他の隠し持った武器を取り出せばいいのです。
冒頭のAくんのその後
ところで、この章の冒頭のAくん。彼は見た目もさわやかで、講義中によく冗談を言って周囲を笑わせるような好青年でした。そんなAくんは、私の初回のフレーム講義を経て自己分析を行い、サークル・ゼミ・趣味(旅行)で自己PRをつくろうとしていました。それぞれ、よくあるカテゴリーだったこともあり掘り下げが難航し、なかなかいいものになっていきませんでした。私は、じっくり考えて強化したりカスタマイズしなさい、とアドバイスしていたのですが、その過程で彼も焦ったのでしょう、連絡が取れなくなってしまいました。
そして久しぶりに顔を出した彼は、すっかり就活に関して意欲を失ってしまっていたのです。すまない気持ちで「これからどうするの?」と聞くと、「もともとお笑い好きで学生コンテストでいいところまで行ったことがあるから、実家がかなり繁盛しているラーメン屋なので、バイトをしながらタレントを目指します」と言ったのです。
私は仰天しました。お笑い? 有名なラーメン屋? 魅力のありそうな経験をしているじゃないか、と。そんなもん、会社にとって価値があるとは思わなかったもんですから……。彼は笑いながら去っていきました。
最初は、彼が持っている原石を引っ張り出してあげられなかったと後悔しました。だけど、それで彼が良い方向に向かうなら、就活だけが最適解ではないかもな、と考え直したのでした。