個人の幸福が会社や社会にとって有益になる

誠意や懸命さはあるが、時に疲弊してしまう日本式の仕事の仕方と、その場しのぎだがうまくバランスをとり、結果的に全てをうまくまとめてしまうイギリス式。個人的な資質や感じ方はあるにせよ、企業体質としてはイギリスの方がよりリラックスしており、成熟しているような印象を持ってしまうが、どのように感じられるだろうか。

イギリスでは今、社会風潮として全ての構造的な差別をなくし、個人の幸福に関して透明度を向上させ、個人と全体の幸福を追求していく風潮にある。そして企業はその大きな一端を担っている。

イギリスでは、雇用を守って個人の幸福を保障することが社会貢献だという考え方が、昔から根底にある。回り回ってそれが会社や社会にとっても有益だからで、単純な能力主義や効率主義が良しとされているわけではない。

折しも2020年から、こちらでも在宅勤務の孤独や不安などから来るメンタルヘルスの問題が指摘されているところだ。現在、イギリス企業は大慌てで福祉的な制度を整え、社内カウンセリングをはじめ諸ツールを充実させることで全般的なウェルビーイングを急ピッチで向上させようとしている。

個人の幸福を向上させる試みも、ここ数年で随分と進行している。SNSなどで自分の名前の後にカッコ入りで「She/her」「He/him」など自身のジェンダー意識を明記することが、イギリスでもかなり浸透してきた。このジェンダーアウェアネスは今後の企業社会においても、個人の幸福を追求する方法として定着していくことだろう。

開かれた企業文化は、明らかに社会風潮を決定する。その急先鋒が、イギリスのロンドンという都市社会なのではないか。そう肌で感じている。

筆者撮影
企業オフィスの延長にあるコワーキング・スペース。
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