上司からのアドバイスを個人攻撃と受け取る人も…

一方、日本人以外の人たちは、チームでプロジェクトに当たっているとはいえ、基本的には個人レベルの意識が優先されがちだ。任された仕事は頑張ってこなし、自分が任されている以上、自分のやり方を通したがる人が多い。上司から注意やアドバイスを受けると、個人攻撃と受け取る人もたまにいるという。ただしこれはイギリス人というよりも、イギリスで働くヨーロッパ出身の人たちによくある傾向である。

イギリス人はどうなのか。これは私の見方でもあり友人たちの意見でもあるのだが、他人との距離感をうまく取る人が多いと感じている。過剰な個人プレーに陥ることもなく、ソツなく組織の中で振る舞える人が多い。中には会社を家庭の延長と考えている向きもあり、互いに思いやり、同僚の行動を温かく受け止める人が比較的多いように思う。彼らは日本人とヨーロッパ人の中間のような存在で、両者のやり方を理解できていると感じている。

こう聞くと日本式の働き方のほうが調和がとれていると感じるかもしれないが、実は落とし穴もある。

これは日本人気質でもあるのだが、仕事においても気づくポイントがとても細かい。プロジェクトを進めるに際して、日本人の上司は完遂までの逐一に対して口を挟みたがる傾向にある。これは非日本人スタッフにとって、非常につらいらしい。

旧王立証券取引所のある辺りが、ロンドン金融街の中心地。
筆者撮影
旧王立証券取引所のある辺りが、ロンドン金融街の中心地。

「結果さえ出せばOK」のイギリス

日本企業で働くイギリス人や非日本人のスタッフに話を聞くと、「日本からやってきた駐在員マネージャーのマネージメントのやり方に、どうしても慣れない」と口をそろえる。

まず、プロセスの非常に細かいところまで口出ししてくること。イギリスでは結果さえ出せばOKで、プロセスは個人に任せる傾向にある。しかし日本人マネージャーはプロセスや手段についても口出しをしてくると、愚痴る人が多いというのだ。

その他の意見としては、上司としての態度が非常に横柄だというもの。日本では上司は何を言っても許される傾向があるが、イギリスでは上司と部下は役職で結ばれているだけで、ある意味で対等。互いの役職内で、自由に意見を交換することができる社会的な関係性にある。

一方、これも複数の友人から聞いた話だが、日本人の上司は仕事の話をする際でも、かなり個人的な感情を交えつつ話す傾向があるということだ。感情を抑えて順序立てて話すことが難しい人が多いのだとか。

これはマネージャー職としての能力があるかどうかではなく、年功序列やグレード制的なところでたまたま駐在員になってしまうことによる弊害ではないだろうか。自分の職務をこなせることと、人やチームを管理できることとは全く違う話なのだが、その辺りは日本企業の方が鷹揚なのだろう。イギリスではマネージャークラスになると、職務能力よりも管理能力を問われるのが普通だからだ。

マネージャーとしての管理能力が不足しているのに管理職になってしまうと、本人と部下の双方にとって悲劇であることは間違いない。