とはいえ、人間の脳は、生まれてきたときも未完成、成人しても未完成。つまり一生涯を通して未完成のまま。その事実は、脳のMRI画像を見るとよく理解できます。

出典=加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)

生まれたばかりの赤ちゃんの脳の中には、「枝ぶり」が全然育っていません(画像左)。だからツルツルで真っ白です。それが、2歳くらいの幼児になってくると黒い筋(枝ぶり)が出てきます(同中)。少しずつネットワークができていくわけです。そして、成人の脳には、太い「枝ぶり」がしっかりとできています(同右)。

ただし、成人になればみな同じようにしっかりとした「枝ぶり」が育つわけではありません。何の経験もせず、何の刺激も与えられない状況では、脳の「枝ぶり」が伸びることはありません。

脳は筋肉と同じで、使うことで鍛えられ、発達していきます。日々の生活で使われ鍛えられている脳は、40歳を超えても成長できる反面、使わないでいれば若くても退化してしまう可能性がある、ということなのです。

40代後半から急増する「脳の老化物質」

脳の機能低下をもたらすのは、インターネットやSNSだけではありません。40代後半になると、私たちの体の中にも変化が起こります。

20代、30代であれば、内臓も元気で消化吸収・代謝機能が高く、多少の暴飲暴食をしても、体に何かトラブルが出てくることはほとんどありません。ところが40代後半になってくると、ちょっとしたタイミングで、体の不調、老化のサインが出てきます。

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神経系の器官である脳も、例外ではありません。テレビに出てくるタレントを見て、顔はわかるのに名前が出てこなかった。冷蔵庫を開けた途端に、何を取ろうとしていたのか思い出せなかった……。40代後半の多くの人が経験する「もの忘れ」は、「脳の老化のサイン」です。

なぜこうしたことが起こるのか。それは、40代後半になると、それまで脳の中には存在しなかった「老化物質」が増えてくるからです。

健康で元気な人であっても、神経細胞が老化を始め、脳の中心部にあって記憶を司る「海馬」に萎縮がみられることもわかっています。こうした変化が脳の成長を阻み、機能を低下させてしまうのです。