50代以降にピークになる脳のエリアがある

その一方で、50代を過ぎてから成長のピークを迎える脳の部分もあります。それが、脳の前方にある「超前頭野」と呼ばれる部分です。

「超前頭野」は実行力や判断力を司る部分です。これに、30代でピークを迎え、記憶や理解に関係する「超側頭野」、40代でピークを迎え、五感で得た情報をもとに分析や理解をする「超頭頂野」を合わせた3つを、私は超脳野ちょうのうや(スーパーブレインエリア)」と名づけています。

超脳野は人間特有のもので、脳の中でもとくに複雑な情報処理をしている超エリート脳細胞集団だといえます。「天才」と呼ばれる人々の生み出すひらめきは、この3つの超脳野の機能が関係していると考えられています。

中でも「超前頭野」は、80歳以上の高齢者でも、元気な人にはあまり萎縮がみられないだけでなく、100歳を過ぎても成長を続けることがわかっています。また、超前頭野が活発に働く人は、ストレスに強い耐性があることが確認されています。

「超前頭野」が発達すると、本来の実行力や判断力が高まるだけでなく、人生の経験をもとに深く理解して考える力や、人と接することで培ってきたコミュニケーション力を生かすことができるようになります。

ということはつまり、社会の中で多くの経験を積み重ねてきた40代後半から50代こそ、「超前頭野」が活発に働くことによって、難しい話や込み入った事情を理解し、適切な判断ができるということ。この世代は、さまざまな経験や知識に裏打ちされた思考力や理解力を兼ね備えた個性が、最も輝く「黄金世代」だともいえるのです。

脳の老化が早い人=認知症リスクの高い人

問題は、40代後半になると、脳の成長が低下する人と、右肩上がりに成長する人に分かれることです。図表1を見てください。45~55歳の間に、人間の脳の成長度が大きく分かれていくことがわかると思います。

出典=加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)
出典=加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)

Aのラインは、脳を鍛え続けることで50歳を超えても脳が成長し続けているケースで、認知症とは無縁。Bのラインは、ごく一般的なケースで、加齢とともに緩やかに脳が衰えていきます。Cのラインは、記憶力低下を自覚しつつも、何も対策を取らなかった結果、急激に脳の機能低下が起きたケースで、若くして認知症になるリスク大です。

次に図表2を見てください。

出典=加藤俊徳『定年後が楽しくなる脳習慣』(潮新書)
出典=加藤俊徳『定年後が楽しくなる脳習慣』(潮新書)

脳の成長力が早く衰えて老化度が早く上がる人(グラフ中の「交差年齢」がより早く訪れる人)は、早期に認知症になりやすい。逆に100歳まで脳が成長する人は老化度の上がり方が遅く、認知症になりにくいことがわかります。

そのため、今の国際的な見地としては、できるだけ長く脳を成長させ続け、高い認知機能を維持することが、老化を抑えるために重要だとされているのです。