令和に「孫弟子」まで生まれた
オリックス・バファローズとの激闘を制し、日本シリーズMVPに輝いた中村はシーズン終了後にこんな言葉を口にしている。
「春季キャンプのときに、古田さんからは『キャッチャーの力で優勝するんだ、オレたちがチームを引っ張るんだという気持ちを忘れるな』と何度も言われました。その言葉を胸にシーズンを戦い抜きました」
「野村の言葉」は古田敦也という稀代の名捕手の経験と知識を加えられた上で、現代の選手へと受け継がれた。
直接、野村克也の薫陶を受けた者だけではなく、三回忌を迎える今もなお「野村の孫弟子」が誕生しているのだ。
そして、野村は言葉を遺す――
誰もが認めるように「野村克也=言葉の人」だった。
混沌とした時代になればなるほど、人はその言葉に救いや癒やしを求めるのかもしれない。
「強い者が勝つのではない、勝ったものが強いのだ」
「弱者には弱者の戦い方がある。運、不運にはそれなりの理由、過程がある」
野村氏が遺した言葉なら、私自身いくらでも思い浮かべることができる。
「野村語録」は決して滅びない。それぞれがおかれた環境、状況に応じて、それらの言葉は輝きを増し、読む者の胸に力強く響くことだろう。
彼の言葉が残っている限り、彼もまた人々の胸の内に生き続ける。つまりは、こんなことが言えるのかもしれない。
野村は言葉を遺した。
ゆえに、野村克也は、今もなお生きている――。
偉大な野球人が亡くなって、すでに2年が経とうとしている。それでもなお、その存在感はますます大きく、そしてよりクリアになっている。
同時にわれわれは改めて、「言葉は力なり」と語った彼の言葉を強く意識することになるのだ。言葉の力は、かくも偉大なのである。