一昨年前に亡くなった野村克也監督は、数多くの格言を残した「言葉の人」としても知られている。なぜ野村監督の言葉はあらゆる人の心に響くのか。『野村克也全語録』(プレジデント社)の解説を担当したライターの長谷川晶一さんが書く――。
野村克也さんをしのぶ会で黙とうする出席者=2021年12月11日、神宮球場
写真=時事通信フォト
野村克也さんをしのぶ会で黙とうする出席者=2021年12月11日、神宮球場

今もなお野村克也の存在は大きいことを実感した「しのぶ会」

2021(令和3)年12月11日、快晴の神宮球場で行われた「野村克也さんをしのぶ会」は、故人をしのび、敬慕する人々が多く集まった。厳かでありながら、どこかほのぼのとした実に穏やかな空間だった。

代表弔辞において、ヤクルト・高津監督は恩師に日本一の報告をした後に、「野村監督は非常に言葉を大切にされる方でした。私はいつもその監督の言葉に救われていました」と語り、「頭を使え。頭を使えば勝てる」との言葉を最期にかけてもらったと振り返っている。

同じくヤクルトの2軍監督を務める池山隆寛は「野村野球=準備野球が1番の土台になっていて、その中でたくさんの野球を言葉にされた方。そういう言葉は自分の土台になっています」と語った。巨人の原辰徳監督も「未来永劫えいごうに残る言葉はたくさんあると思います」と話した。

まさに言葉、言葉、言葉である。

そのほか、野村の教え子たちにインタビューを行うと、彼らは必ず恩師の口調をモノマネしつつ、自らが感化された「野村語録」を紹介してくれた。

ある者にとっては「一流の脇役になれ」という教えだったり、「常に原理原則を見据えよ」という言葉だったりさまざまだった。

彼らの中には、今もなお「野村克也」という存在は大きい。