メジャーリーグ・エンジェルスの大谷翔平選手が2021年11月、国民栄誉賞の受賞を辞退した。神戸親和女子大学の平尾剛教授は「近年の受賞者は現役スポーツ選手が続いている。受賞基準が曖昧で、受賞をためらわせる賞はやめたほうがいい」という――。
祝賀ムードに水を差した国民栄誉賞の打診
2021年11月19日、メジャーリーグ・エンジェルスの大谷翔平選手がアメリカン・リーグのMVPに選ばれた。日本選手としては2001年のイチロー氏以来20年ぶりで、さらに全米野球記者協会に所属する記者30人の満場一致で選出されたのも6年ぶりという快挙である。
その大谷選手に国民栄誉賞の授与を打診したと松野博一官房長官から発表されたのは、MVP獲得のわずか3日後だった。大谷選手が「まだ早い」と受賞を辞退したのは周知のとおりである。
MVP獲得から国民栄誉賞の打診、そして辞退へと、この間の流れはじつに気忙しかった。
投手と野手の二刀流という、これまでの常識を覆す挑戦が評価されてのMVP獲得を、もっと堪能していたかったというのが私の本音である。これまでの活躍を振り返り、その余韻に浸りながらじっくり言祝ぐのがファンの楽しみだからだ。そんな思いも虚しく、ほどなくして世間の興味は大谷選手の輝かしい実績から「国民栄誉賞」へと移り、「MVP獲得」はいつしか遠景に退いた。
私はそれが残念でならない。
これほどメディアが騒ぎ立て、たとえ辞退したとしてもこれだけニュースになる賞は、他には見あたらない。この祝祭の余韻に水を差したのはどう考えても「国民栄誉賞」である。楽しみを奪われた一人のファンとして、あらためてこの賞について考えてみたい。