ツェッテルカステンのメモ術なら実践を積める

ツェッテルカステンを使うと、さまざまなシチュエーションで自然に十分な経験を積めます。今の状況に応じて、どんな行動をすればいいのか直感でわかるのです。複雑な状況における意思決定は、長い理論的分析があって生まれるのではなく、直感で行われます(Gigerenzer, 2008a, 2008b)。ここでいう直感とは、神秘的な力ではなく、経験が積み重なった歴史です。成功または失敗に関する数多くのフィードバックループを通じた、実践が蓄積したものです。

ズンク・アーレンス著、二木夢子訳『TAKE NOTES! メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる』(日経BP)

科学のような理性的、分析的な探求でさえも、専門性、直感、経験なしでは機能しないという研究結果もあります(Rheinberger, 1997)。チェスの棋士は、初心者よりも考えていないように見えます。パターンを認識し、何手も先を計算しようとするよりも、過去の経験に従うからです。

プロのチェスと同様に、プロの書き手としての直感は、度重なるフィードバックと経験によってのみ得られます。

ツェッテルカステンのワークフローは、執筆の各段階で何をするかを明確には教えてくれません。しかし、完成に必要なジャンルの違うタスクを分離することは教えてくれます。それぞれの執筆タスクは妥当な時間内に完了でき、連動するタスクを通じてただちにフィードバックが得られるようになっています。

このように、ツェッテルカステンは意識的な実践の機会を与えるので、それぞれのタスクの上達が促されます。そうすれば、経験を積めば積むほど、直感に頼って次の行動を選べるようになります。

状況を正しく直感的に判断するための経験を積み、これまでの文章術の本とは永遠にお別れしましょう。真の専門家は計画を立てない。フライフヨルグははっきりとそう書いています(Flyvbjerg, 2001)。

関連記事
【第1回】「30年で58冊の名著を量産」天才社会学者がやっていた無駄にならないメモの取り方
【第2回】メモが「ただのゴミ」になる人と「アイデアの宝庫」になる人の決定的な違い
「師走を元日の朝のように生きろ」人生がうまくいく人が欠かさない"5つのマイクロ習慣"
「上が言っていることだから」を連発する上司を一発で黙らせる部下の"すごい質問"
「親ガチャという概念は正しい」アメリカ人経済学者が"人生の宝くじ"を否定しない理由