クリエイティブになるためには仕組みが必要

しかし、こう答えるためには重要な条件があります。それは、そもそも柔軟になることが可能なしくみが大切だということです。

柔軟になるには、あらかじめ考えた計画からそれても崩壊するようなことのない、柔軟な作業構造が必要です。融通の利かない整理法にとらわれていたら、作業の柔軟性に関してすばらしい洞察をもっていたとしても役に立ちません。

残念ながら、これまで、最もいい方法は計画を立てることだとされてきました。計画を立てることは、ほとんどの書籍で推奨されていますが、それは自分をレールに載せるのと同じです。

どの仕事が重要なのかは、体で覚えるしかない

人間は、計画を立てるのをやめた瞬間、学習しはじめます。洞察を得て、すぐれた文章を書けるようになるには、実践あるのみです。

そのためには、文章を完成させるというゴールに必要な、特に重要で見込みのあるタスクを選び、またそれらのタスクのあいだを柔軟に行き来できるようになる必要があります。

これは、自転車の補助輪を外して、正しい乗り方を学習しはじめる瞬間に似ています。最初は少し不安に思うかもしれませんが、同時に、補助輪が付いたままでは永遠に自転車には乗れません。

自転車レーンで自転車に乗る子供
写真=iStock.com/Andrey Moisseyev
※写真はイメージです

エキスパートは、体で覚えた経験によって名人の域に達しています。どのタスクが完成原稿に近づけてくれ、どのタスクが単なる脇道なのかを判断する直感が身についています。

これに、例外なく適用できる簡単なルールはありません。プロジェクトはそれぞれ違います。自分が進めているプロジェクトの各段階において、読んで研究する、文章を見直す、アイデアについて議論する、原稿のアウトラインを変更するなど、最適な作業は異なります。どの段階でも、「無意味なアイデア」や「矛盾の可能性」に気づいたり、「どの脚注はフォローしなくていいか」などを判断できる、例外なきルールはありません。

エキスパートになるには、みずから判断し、さまざまなミスをして学べるだけの自由が必要です。自転車と同じで、実践でしか学べないのです。