文章を書く前には、どこまで構成を決めておくべきか。作家で研究者のズンク・アーレンスさんは「チェスの棋士は、あまり考えていないようにみえる。同じように、真の専門家は計画を立てない。文章を書くときにも、きっちりと構成を決めてしまうと質が下がってしまう」という――。
※本稿は、ズンク・アーレンス著、二木夢子訳『TAKE NOTES! メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる』(日経BP)の一部を再編集したものです。
現代人の注意力は低下している
ある程度、まとまったアウトプットをするには注意を持続させることが必要です。
ある研究によると、メールやテキストメッセージによる割り込みによって、私たちの生産性は約40%低下し、10以上低いIQしか発揮できなくなっているそうです。この研究は出版されておらず、統計学的にも不適切ですが、たしかに私たちがうすうす気づいていることを裏づけるように思えます。それは、私たちの注意機能には欠陥があるということです。
同じようなことを調べたきちんとしている研究もあります。たとえば、テレビを見ると子供の注意持続時間が低下することがわかっています(Swing et al., 2010)。
また、テレビのニュースでの著名人の発言などの抜粋(サウンドバイト)は、ここ数十年で平均の長さが着実に短くなっています(Fehrman, 2011)。
1968年の米国大統領選挙では、ノーカットで流された候補者の発言の長さは平均で40秒を少し上回る程度でしたが、1980年代の終わりには10秒を切り(Hallin,1994)、2000年には7.8秒になっていました(Lichter, 2001)。最近の選挙でも、この傾向はもちろん逆転していません。
この研究結果が、人間の短くなった注意持続時間にメディアが合わせているという意味なのか、はたまたメディアが注意時間の短縮を引き起こしているという意味なのかはわかりません。
いずれにしても、気を散らすものが周囲に増えていることと、注意持続時間を鍛える機会が減っていることは明らかです。