ポイントは「安くてもそこそこ質がいい」

ここで大事なのは、東京の食事は「安くてもそこそこ質がいい」ということです。

原田曜平『寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生』(角川新書)

日本に住む我々はこれが当たり前だと思っていますが、世界の大都市では、そういうわけにいきません。北京やNYでも安い店はあります。しかしものすごくマズかったり、(特にアジアの屋台などは)味は美味しくともよくわからない危険な材料が入っていると言われていたり、不衛生だったり、店員の態度がひどかったりと、安いなりに低品質を覚悟しなければなりません。

しかし日本の場合、安いうえに店内は清潔です。店員はちゃんと教育されていて、味もそこそこ、高い水準をクリアしています。

日本人はたった数百円の食事の店に対してさえ、ちゃんとしたサービスを要求するので、店は律儀に応えていますが、これは諸外国ではちょっとありえない考え方です。ちゃんとしたサービスを受けたかったら高級店やホテルに行くべきであって、激安店でサービスの質を求めるのはお門違いも甚だしい。海外では「安かろう、悪かろう」を当たり前のこととして受け入れる人が大多数なのです。

世界各国の料理を安く気軽に楽しめる

食の選択肢の多さ、懐の深さも東京のすごいところです。和食ひとつ取っても、うどん、蕎麦からトンカツ、寿司、天ぷら、煮物、鍋料理、魚料理まで幅広く、選択肢に事欠きません。イタリアンやフレンチ、中華料理や韓国料理、各種エスニック料理といった世界各国の料理も、東京で食べられないものは少ないでしょう。

食だけが趣味の私は、これまで「食べログ」で3.7以上の得点をとっている東京圏のお店のほとんどに行きましたが、行きたいお店のリストは消化しきれません。世界各国のレベルの高い料理を安く楽しみ続けられるエリアは、世界において東京以外にはないでしょう。しかも、都内なら電車移動1時間以内くらいの範囲で、ほとんど食すことができます。