新規投資やM&Aに積極的なのは成長企業
逆に、成長し続けている企業は、純資産の増加を上回る利益成長が続きますので、ROEの増加が続くことになります。
単純にROEが高いか低いかは、業種や企業の特性で差がありますので、ROEが時系列で見て増加しているか減少しているかを見るとよいでしょう。
なお、成長企業では、先行投資によって一時的に利益が減少し、ROEも低下するケースがあるので、このような場合は例外と捉える必要があります。
同様に、減価償却費やのれん代もROEに影響します。潜在的な収益力を重視する場合は、EBITDA(利払い前、税引前、減価償却前利益)でROEを見るのも一つの方法です。
では、ROEを上昇させるには、どうすればよいでしょうか?
ROEは「純利益÷純資産」でも計算できますから、ROEを上昇させるには、分子の利益を増やすだけでなく、分母の純資産を減らすことでも可能です。
企業が利益を増やすのは当然として、分母の純資産を減らし、資本効率を高めるには、
●内向き:自社株買い、配当還元
●外向き:新規投資、M&A
などの施策が有効となります。
多くの成長企業が、新規投資やM&Aを通じて成長を試みる理由も分かりますね。高ROEであることは、調達資金をうまく使って利益を生み出している証明ですから、そのような企業の株価や企業価値は高くなり、次の資金調達もしやすくなる好循環になります。
逆に自社株買いや配当など内向きの施策で純資産を減らすのは、成長ピークを過ぎた企業に多いようです。企業規模が大きいところは、M&Aで少しくらいの利益を加えても業績インパクトは小さく、大きな案件は失敗すると経営責任が問われますので、動きづらいという側面もあります。
内向きと外向きで方向性は違いますが、どちらもROEを上昇させる効果があり、これらの施策が発表されると、その効果への期待が企業価値に向かいPER(株価収益率)や株価に織り込まれるというわけです。