ROEが高いと成長スピードも速い

次にA店とB店がともにチェーン店を出した場合を考えてみましょう。どちらの店がどのくらい成長スピードが速いか、比較して考えます。最初の20万円で得られた利益は、すべて資本金に回して元手を増やすとします。

A店、B店がそれぞれ最初の販売で得られた利益は、

●A店:20万円
●B店:40万円

でした。その利益を次回の元手に組み入れると、

●「A店:20万円+利益20万円」で2倍の40万円
●「B店:20万円+利益40万円」で3倍の60万円

にそれぞれの元手が増えることになります。

そして、これまで同様にA店は資本金と同額、B店は資本金の2倍の弁当を仕入れて販売するので、チェーン店全体の仕入れ金額は、

●A店が元手の40万円
●B店は元手の2倍の120万円

と、3倍の差がつき、利益も同様に3倍の差になりました。

 【図表1】お弁当屋さんの比較でみるROE(株主資本利益率)と企業成長
【図表1】お弁当屋さんの比較でみるROE(株主資本利益率)と企業成長

もし弁当の販売がともに順調なら、B店のほうが成長スピードが速いため、両店の差はどんどん開いていくことになります。

このように、業績が黒字で成長段階の場合、ROEが高いほど、成長スピードが速くなります。そして、高ROE企業であるほど、将来の成長期待が高くなり、株価も高くなる傾向があります。

ROEの低下は成長鈍化のシグナル

ここまで分かれば、人気だった成長株が増収増益にもかかわらず、ROEの低下で株価が売られる理由も分かります(ROEを知らない人にとってはまったく訳が分からないことでしょう)。

それは、企業の成長が鈍化しているシグナルなのです。

高成長を遂げていたお弁当屋さんB店が成長の踊り場を迎えて、A店並みになってしまうと、A店の3倍速で成長する前提でB店に投資した投資家はどうしますか、という話ですね。

企業の成長ステージとROEの関係は、

成長期:ROEが上昇
安定期:ROEが横ばい
減速期:ROEが低下

というようになります。

ROEが低下するということは、利益成長率が純資産の増加率よりも低下することを意味します。ROEが減少に転じた成長企業は、いかに増収増益が続いても市場評価を得られにくくなり、実際の株価もそれにつれて頭打ちになる傾向があります。