多くの株式投資家は「安いときに買い、高いとき売る」という行動を繰り返している。だが10兆円の資産を築いた投資家ウォーレン・バフェット氏は、株を売らず、長期保有することで知られている。彼が「10年待てないなら株を買ってはいけない」と主張する理由とは――。
※本稿は、桑原晃弥『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」 資産10兆円の投資家は世界をどう見ているのか』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
株式の所有期間は「永遠でも良い」
株式の所有期間は「永遠でも良い」というのがバフェットの考え方です。
バフェットの師であるベンジャミン・グレアムは「投資家は、1年程度ならば何とも思わずに持ってしまう」といっているように、株式の長期所有を推奨していました。もう1人の師匠ともいえるフィリップ・フィッシャーも、株を売る理由は、1)購入時の判断ミス、2)成功企業が失敗を経て投資価値を失う、3)もっと有望な成長株に乗り換える、の三つしかなく、本物の成長企業には「売り時など存在しない」と言い切っていました。
そしてバフェットは、2人の師以上に長期保有を理想としています。そう考えるようになった原因となる体験が二つあります。
一つは11歳で初めて株式を購入した時の体験です。1942年、小さなビジネスを続けることで120ドルを貯め込んだバフェットは、姉のドリスを誘ってシティーズ・サービスの優先株式(Preferred stock)を3株ずつ購入します。株価は38ドル25セント、3株で114ドル75セントです。
当時のバフェットは株のことも会社のこともよく知りませんでしたが、父ハワードが推奨する株というのが購入の理由でした。株価が下がった時、ドリスから連日責め立てられたバフェットは、株価が40ドルに回復した際に売り、2人合わせて5ドルの利益を手にしますが、のちに同社株は202ドルまで高騰しました。
バフェットはこの経験から、1)買った時の株価ばかりに拘泥してはいけない、2)よく考えないで慌てて小さな利益を得ようとしてはいけない――という教訓を得ています。