永久に持つことさえいとわない

その後、バフェットとガイコの縁は一時的に切れますが、1975年に再びガイコに注目したバフェットは、経営危機に陥ったガイコの株を再度取得、その再建にも尽力することで、やがてバークシャー・ハザウェイの傘下に迎え入れました。初めて同社株に投資したのが1951年ですから、実に70年来の付き合いということになります。

自分がほれ込んだ企業であれば、これほど長く所有するのがバフェットのやり方です。

こうした長期保有はウォール街の住人にはなかなか受け入れがたいことですが、先述したようにバフェットはグレアムのいう1年程度どころか、永久に持つことさえいとわないという考え方をしていて、こんなことをいっています。「私たちは、企業を買うのが好きです。売るのは好きじゃありません。傘下に収めた企業との関係が一生続くことを希望しています」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』ジャネット・ロウ、ダイヤモンド社。絶版)

近年の「SPACブーム」には厳しい視線

傘下に入っている企業はもちろん、アップルのように傘下に入っていない企業も含め、バフェットが投資する企業は強い競争力を持つ優れた企業であり、その経営者も優れた人材であるというのが大前提です。

そんな優れた企業がそこそこの価格で買えるなど、そうあることではありません。だとすれば、そういう企業に出会えたなら、できるだけ長く、可能なら永久に保有し続けたいと、バフェットは考えているのです。

もし目先の利益だけを追う投機家なら、もちろんそんな必要はありません。株価が上がったり下がったりしたその瞬間を見逃すことなくぱっと買って、利益が出たらぱっと売ってしまえば、それで目的を果たしたことになります。

ましてや、最近アメリカで急増し注目されているSPAC(特別買収目的会社)の、所有や経営ではなく買収そのものを目的とし、2年で買収先が見つからなければさっさと解散するというやり方は、バフェットが最も忌み嫌うものです。報酬だけを目的とするSPACブームを「killer(破壊的影響をもたらすもの)」と表現しています。