長い目で企業の実力を見る

企業が成長し続けるには、幸運だけでは無理で、優れた経営力や卓越した研究開発力といった多くの要素が欠かせません。それらがあって初めて企業は成長し続けることができるわけですが、こうした企業でさえ毎年、増収増益を続けることができるとは限りません。

Under the canopy of a large oak tree
写真=iStock.com/keiichihiki
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時には次なる成長に向けて痛みを伴う改革を必要とすることもあれば、今回の新型コロナ禍のように企業の力だけでは対応しきれない逆境に襲われることもあります。

だからこそ、企業の成長は、1年単位で見るのではなく、より長い目で見ることが必要なのです。バフェットにとって投資すべき企業とは、パッと咲いて、パッと散る企業ではありません。長いスパンで見た時にしっかりと成長し続けるだけの力を持った企業であれば、その間に株価が上がろうが下がろうがそんなことはどうでもいいというのがバフェットの考え方なのです。

最初に惚れ込んだのは通販型の自動車保険会社

バークシャー・ハザウェイはいくつもの企業を傘下に抱えていますが、たくさんの企業群の中でバフェットが最初に投資したのが、米国第2位の自動車保険会社ガイコ(1936年創設、1996年に傘下に入る)です。

バフェットがガイコのことを初めて知ったのはコロンビア大学大学院時代のことです。きっかけは、グレアムの会社グレアム‐ニューマン・コーポレーションが同社株の大半を所有していたことでしたが、その半分以上を手放したことを知ったバフェットは「ガイコとはどういう会社だろう?」と興味を持ち、ニューヨークからワシントンD.C.まで始発列車に乗って同社を訪問しています。

そこで財務担当副社長のロリマー・デービッドソンを質問攻めにしたバフェットは、同社が当時としては革命的ともいえた「代理店を使わず、通信販売することで、自動車保険をより安く販売」していることを知り、そのビジネスが「ぜったいに成功間違いなし」と確信、周囲の反対を押し切って自分のポートフォリオの4分の3を売り払い、その代金でガイコを350株購入しています。

当時のバフェットのガイコへの入れ込みようは凄まじいもので、証券会社のブローカーとして顧客に株式を頻繁に売買させることで手数料を稼がなければならないにもかかわらず、ガイコの株を勧めて、「20年ずっと持っているのが一番いい」「失業保険の代わりにこの株を買っておくことをお勧めしますよ」というほど力を入れています。