業績不振のときには「7色のアフロ頭」で会議を開催

変人ぶりは、社内でも度々発揮された。業績が思うように伸びず社内に暗いムードが漂っていた時には、幹部の会議に全員アフロのカツラを被って出席することを求めた。しかも、自身は7色のアフロをかぶって会議室に登場したという。

「そういう変なことを、とても真面目にやる人でした。そのギャップが魅力だったのかもしれませんが、決して変なことを社員に強要するのではなくて、自分から率先してやるタイプ、背中を見せるタイプでしたね。私はこういう、ちょっと変わった社風がとてもいいと思っていて、ぜひ守っていきたいと思っているんですが、私自身はいたって普通の人間なんです」

だが、カリスマ性のない普通の主婦であるはずの久美さんが会社を率いるようになってからわずか3年目の2019年、エスワイフードは史上最高売り上げを記録することになるのである。いったい、何があったのだろうか?

画像提供=エスワイフード
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「自分は経営の素人」という認識が奏功した

「あの人がトップじゃマズイと思って、社員ひとりひとりががんばってくれたからじゃないですか?」

久美さんは冗談めかしてこう言うのだが、2019年まで、つまりコロナ禍以前の好業績には、先述の決意表明の内容を地で行ったことが奏功した面が大きい。

まず、自分は素人であるという認識から、久美さんは飲食店の経営者にとって最も難しいと言われる閉店の判断に、明確な数値基準を設けたのだ。一定期間基準を下回ったら、どのような理由があろうと自動的に閉店すると決めた。

「うちの場合、閉店の判断に『思い』が絡むことが多かったんです。この店は会長の思いで作った店だから潰せないとか……。でも、私は素人だから、経験値で閉店すべきかどうかの判断を下すことができません。だから、早い段階で閉店の基準を作ったんです。すると不思議なもので、今度はお店を潰すまいっていう『思い』でお店が立ち直るケースが続出して、なんと赤字店舗がなくなってしまったんですよ」