きちんと顔を見て話す、変化は見逃さない
経営に関してはいまだに自信がないと笑う久美さんだが、キャプテンシー(チームを統率する力)については相当な自信を持っているという。キャプテンシーの核にあるものとは、いったいなんだろうか。
「選手時代はポイントガードだったので、とにかく人をよく見て、その人に合った使い方を考える役目でした。ひとりひとりをよく見て、その人に合った声のかけ方とか叱咤の仕方をする。どうすれば人がよく見えるかですか? これ、よく聞かれることなんですけど、わかりません(笑)。ただ、きちんと顔を見て話すことと、変化を見逃さないことは心がけていました。変化が見えたら、すぐに声をかける。これは、学校のいじめ問題にも通じることですが、児童に何か変化があったと思ったらすぐに声をかけないと、事が大きくなってからでは手遅れの場合が多いんです。変化を見抜くってことですかね」
唯一自分で選んだのが「専業主婦の道」だったけれど……
思い切った権限移譲と、チームメイトのわずかな変化も見逃さないキャプテンシー。ひょっとすると久美さんは、経営者になるべくしてなった人なのかもしれない。
「家庭のことも、もう少しきちんとやりたい思いはあります。自分の人生を振り返ってみると、私、自分から何かを選択したことってないんです。バスケも姉の関係で始めたし、教員になったのは父親の勧めだし、ミニバスの監督もやりたくなくて黙っていたのに見つかっちゃって……。唯一自分で選択したのが会長と結婚して専業主婦になる道でした。なのに、こんなことになってしまって。でも、そのお蔭でとてもたくさんの人と出会えるようになって、面白い人生だなと思いますよ」
家事をおろそかにしたくないと、夕食は前夜か朝に下ごしらえをし、帰宅後すぐに食べられるようにしている。うしろめたさはあるというけれど、久美さんのような存在が男性中心の企業社会を変えていくのかもしれない。
「世界の山ちゃん」がコロナ禍をどう切り抜けるか、山本代表の采配に注目したい。