「100円アイスなら66円」卸値価格で販売

まずは試験的に、アイスを売り出すことにしました。どうせ20年間利益の出なかった商品ですから、それ以上悪くなることはありません。甲府駅と会社を結ぶ中間ぐらいの場所にプレハブの店(実験店「新々平和通り店」)を作って、アイスの冷蔵ケースをダーッと10台ぐらい並べました。

通常はメーカーが問屋に卸し、問屋が小売店に卸すわけですが、直接売るならその分安くしても、十分利益は出るわけです。ですから、売値は卸す値段と同じ34パーセント引きにしました。100円のアイスなら66円です。

売れるとは思っていましたが、想像以上なんてものではありません。甲府駅から4~5キロメートル離れ、周囲が田畑ばかりのところに「どこから人がわいてくるのかな」と思うほどの行列です。「これはいける!」という手応えがありました。

そこで、すぐに千葉県柏市にあった子会社に「スーパーの卸しなんてやっている場合じゃないぞ。すぐに店を作ろう!」と連絡して、国道16号沿いに直売の店舗を出しました。山梨とはマーケットの規模が違いますから、予想通り輪をかけての大繁盛です。

工場直売システムで、年商100億円を達成

全国的にも話題になって、大手メーカーのみなさんも見学に来られました。しかし、スーパー等の販路を持っている大手メーカーのみなさんは、「工場直売をやるなら、お宅の商品はもう売りません」と言われると困りますから、どなたも真似はできなかったようですね。販路を失うというピンチだったからこその大逆転です。

工場直売システムで、夏はアイス、冬はシュークリームやロールケーキ、100円ケーキという体制で売れに売れ、出店の申し込みも後を絶たず、あっという間に年商100億円を達成しました。中道工場だけでは供給が追いつかなくなり、白州はくしゅう名水で知られる北杜ほくと市に、白州工場を建設することになったのです。

2005年に開発された人気アイス「チョコバッキー」。発売から3年で、シリーズ累計1億本を売り上げた(画像­=『シャトレーゼは、なぜ「おいしくて安い」のか』)