プレミアム性のあるバイクの価格上昇は自然だが…
ただし、2012年からは徐々に回復の兆しを見せ始め、とりわけ軽2輪は堅調だ。国内向け、東南アジア向け、インド向け、欧州向け、北米向けと多種多様だったモデル構成の整理が進み、生産拠点も含めてグローバルな市場を形成。125cc~350cc前後の排気量帯に魅力的なスポーツバイクが投下され、ガラパゴス化が著しかった日本市場へも積極的に導入され始めた。
実際、126cc以上の新車販売台数は2020年の段階で14万1771台まで回復している。どん底だった2011年を基準にすれば54%増であり、原付2種(51cc~125cc)の好調も相まってバイクブーム再燃と言える状況にある。この流れが潜在的な需要を刺激し、新車がさらに売れ、やがてそれらがリーズナブルな中古車市場を形成……という循環が理想だが、かなりいびつな現象が起きている。それが中古車価格の異常な高騰だ。
70年代を彩ったホンダ・CB750FOURやカワサキZ1(1972年)には1000万円を超える個体があり、カワサキ・Z400FX(1979年)やホンダ・CBX400F(1981年)といった400ccクラスのモデルも300万円前後で推移。その影響は世代の異なるレーサーレプリカやネイキッドと呼ばれる種類のバイクにも波及しており、80年代から90年代にかけて大きなムーブメントになったホンダ・NSR250R、アンチレプリカの急先鋒としてそれを駆逐したカワサキゼファーなどは、良好なコンディションであれば200万円を下回ることはない。
もっとも、こうしたモデルは短くとも三十数年、長ければ半世紀の時を経て、維持されてきた車体だ。しかるべき手間とコストが掛けられていることを踏まえれば、一定の価格に達するのは致し方なく、プレミアム性も確かにある。そこまでは許容範囲としても、ごく普通に流通するはずの現行モデルが極端な品薄状態にあり、その反動として同じ型の中古車や新古車が、新車より高値で店頭に並んでいるのは正常ではない。