「すし詰め」=「缶詰のイワシ」
——英語が得意な人に、英語を分かりやすく伝えるトレーニングもされているのですか?
【ウィルソン】はい。難しい英語表現をお題として、やさしい英語に言い換えるということをやってもらっています。そうすると、英語学習者は「これなら分かる」という体験をします。その反応を英語が得意な人に見てもらうと、一番納得感が得られるようです。
——たとえば「すし詰め」のように、日本人は誰でも知っている比喩を直訳してしまって伝わらなかったという話も聞いたことがあります。
【ジョン】英語だと「packed in like sardines」(缶詰のイワシのよう)という表現になりますね。
——イディオムを使いこなすのはハードルが高そう……。
【ウィルソン】知らないと手に負えないので、あまりイディオムは使わないようにと伝えています。だけど、これを「電車に人が多くて、動けない」と簡単な表現に言い換えると絶対に伝わります。
——日本語では習慣的に使うものの、英語にすると英語話者がきょとんとしてしまいそうなフレーズも多そうです。
【ウィルソン】謝る必要のない場面で「アイムソーリー」で始めてしまうケースはよくあります。「すみませんが確認させてください」と言いたいところを、英語で「I'm sorry, but~」と始めてしまう。
大事なことはもう一度言う
——英語でプレゼンを行ったり、メールを書いたりする時など、ビジネスの現場で分かりやすく伝えるためのアドバイスをお願いします。
【ウィルソン】「やさしいコミュニケーション」トレーニングでは、「何がしたいのか先に言ってください」と伝えています。たとえば締め切りを変更したい時は、「締め切りを変更したいです」という一番大事なポイントを最初に伝え、次に「新しい納品日は○日」と具体的な話をする。そして最後に大事なことをもう一度言う。この基本を押さえれば、ちゃんと伝わります。
【ジョン】日本語母語話者はソフトに伝えようとしがちですが、はっきり言ってもらえるほうが伝わりやすいですね。
【ウィルソン】私はメルカリの日本語トレーナーになる前、外資系の企業で営業をしていました。そのとき、日本語思考で英語のメールを書くと、相手に何をしてもらいたいのか分からない文章になりがちでした。コミュニケーションを複雑にせず、自分にとっても分かりやすい答えを手に入れるため、相手にイエスかノーかで簡単に答えてもらえる文章になるよう、書く工夫をしていました。
——どのように伝えれば相手が答えやすいか考えることも、やさしいコミュニケーションかもしれません。
【ウィルソン】自分が使っている言葉を、一度俯瞰してみるといいですね。