「バイデンの次」としてのお膳立て

ハリスはそれでも政権にとっては正統な後継者であるのは間違いない。

すでにバイデンは就任時の今年1月20日の時点で78歳2カ月であり、1989年1月の退任時に77歳11カ月だったレーガンよりも高齢だった。

日々、最高齢の記録を塗り替えており。再選された場合、25年1月20日の2期政権発足時にはバイデンは82歳2カ月となる。全く未知の領域だ。

どう考えても、「バイデン後」を想定しないといけない。

バイデン政権内には、ハリスを「育てる」動きも目立ちつつある。

国内問題の会見などでバイデンが一人ではなく、その横にハリスも立ち並ぶ。

外交問題なら、さらにブリンケン国務長官がこれに加わる。チームで政策を動かしており、その中にはハリス氏が重要な位置を示すことを念押ししているようにもみえる。

過去の政権でも正副大統領が立ち並ぶことは少なくなかったが、バイデン政権での場合、その頻度がより高いようにみえる。

「外交音痴」というハリスについたイメージを断ち切りたいという意図もあり、8月下旬にはシンガポール、ベトナムを歴訪させた。

ハリスの本格的な最初のアジア外遊となったこの2カ国には、事前にシャーマン国務副長官、オースティン国防長官が訪問し、細かな調整を行っていた。「ハリスの手柄をおぜん立てするようだった」とみるのは言い過ぎではないかもしれない。

2024年の大統領選までに「ハリスの高笑い」が聞こえるか

次の大統領選挙が行われる2024年にはハリスは60歳となり、政治家として最も脂がのった年齢となる。ただ、バイデンが24年には不出馬を選んだとしても、それで「ハリスに禅譲」するわけでは全くない。

共和党側にはドナルド・トランプ再登場の可能性があり、「ハリスでは勝てない」とみられた場合、誰でも出馬できる現行の予備選の制度では候補が乱立するかもしれない。

写真=iStock.com/Roman Tiraspolsky
※写真はイメージです

同年に35歳になり、大統領選挙の被選挙権を獲得できる、上述の若手の期待の星であるオカシオ・コルテス下院議員の動向も注目されようになるだろう。オカシオ・コルテスはいまのところ、出馬を強く否定しているが、まだ分からない。

移民問題にしろ、選挙制度にしろ、これまでハリスに与えられた複雑な政策的役割がもしうまくいったのなら、目立つため、それこそ一発逆転打となり、ハリスの評価も上がる。そうなれば、民主党を統合する存在にハリスが成長するかもしれない。

ハリスを知った人なら誰でも共通した印象がある。それは実によく高らかに笑うことだ。各種インタビューでは、政治的に苦境に立った時の述懐など、驚くくらいのポジティブな高笑いをする。

ハリスが現状を打開し、この高笑いが聞こえるかどうか。あるいはこの高笑いが空回りするのか。ハリスから引き続き目を離せない。

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