次期アメリカ大統領の最有力として注目されていたカマラ・ハリス副大統領の評判が芳しくない。上智大学の前嶋和弘教授は「『移民に冷たい』『外交音痴』というイメージが定着しつつある。このままだと次期大統領選の候補に選ばれない可能性もある」という――。
シンガポールで演説するカマラ・ハリス米副大統領
写真=EPA/時事通信フォト
シンガポールで演説するカマラ・ハリス米副大統領=2021年8月24日

次期大統領最有力への大きな期待はあるが…

「女性初、黒人初、インド系アメリカ人初の副大統領」として新しい時代を象徴する政治家であるアメリカのカマラ・ハリス副大統領に対する評判がいまひとつだ。

バイデン政権発足8カ月を迎えたが、政権の中で与えられている担当政策はどれも複雑であるため、具体的な成果につながっていない。

「まだ、慣れていないだけ」かもしれないが、ここ数代の副大統領に比べると、ハリスの影はまだかなり薄い。

「次期大統領最有力」という期待像とハリスの「現在地」とは雲泥の差がある。

「移民に冷たい」の印象を世間に与えた“ある失言”

ケチのつきはじめは、最初の外遊として選んだ6月上旬のグアテマラ、メキシコ訪問だった。

初日はグアテマラのジャマテイ大統領と会談し、アメリカの南部国境に中米から押し寄せる移民の根本的な原因である治安や貧困について、経済支援や犯罪組織への対処にアメリカが協力することで意見が一致したところまでは良かった。

しかし、直後の記者会見で「(メキシコ国境には)来ないでください。来ないでください。アメリカは法律を施行し、私たちの国境を守る」とシンプルに訴えた。

この言葉に対して、「不法に入ってくる移民には徹底的に強く出なければならない。弱腰だ」といった共和党からの批判はいつものことだが、身内の民主党からもおそらくハリスの予想以上に強い批判が続いた。