根強い有権者のプーチン大統領に対する支持

プーチン大統領に対する有権者の支持には根強いものがある。世論調査機関であるレバダセンターの調査によると、プーチン大統領に対する有権者の支持率は2021年8月時点で61%と、引き続き過半を維持している(図表2)。大統領の支持者の多くが、旧ソ連末期からのロシアの社会・経済の混乱を経験した中高年齢層とされる。

出所=レバダセンター

今年12月で、旧ソ連が崩壊して30年を迎えることになる。最初の10年間、ロシア経済は極度に混乱し、最悪期には実質GDPがソ連崩壊時の6割程度まで縮小した。自殺率や犯罪率も上昇するなど社会も非常に混乱したが、2000年に就任したプーチン大統領が原油高を追い風にロシア経済を急速に立て直し、社会を安定に導いた。

過去の経済・社会の混乱を経験している世代ほど、プーチン大統領に対する支持は根強い。他方で、そうした時代を知らない「改革派」の世代も着実に増えている。彼らにとって安定は停滞であり、閉塞へいそくでもある。2021年2月に収監された反体制指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏は、そうした改革派にとってシンボル的な存在だ。

今年に入ってからも、ロシアでは首都モスクワなどで改革派を中心とする反政府デモが散発的に行われている。そうした改革派の声も反映されているのだろう、8月時点のプーチン大統領への不支持率は37%と近年で最も高い水準となった。このように反体制派が勢いを強めていることを、プーチン政権も実際のところ警戒している。

一筋縄ではいかないロシアの国民感情

近年、欧米からの経済制裁や原油安を受けてロシア景気は停滞が顕著であった。それに追い打ちをかけたのが、2020年春に生じたコロナショックだった。その後も、感染に歯止めがかからないことや行動制限を課されることなどによって、有権者の不満が増幅されていた。そうした中で、プーチン政権は今回の総選挙を迎えたことになる。

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しかしながら、総選挙で与党・統一ロシアが失った議席は限定的であった。選挙不正の可能性も取り沙汰されているが、そもそも選挙制度が与党・統一ロシアに有利であること、統一ロシア以外の政党が成熟していないこと、結局のところプーチン政権に信頼を寄せる有権者が多いことが、今回の総選挙の結果につながったと整理できるだろう。

もちろん、統一ロシアに票を入れなかったプーチン大統領の支持者も少なからず存在したはずだ。近年、ロシアの社会は確かに安定しているが、一方で景気の低迷で所得が増えないばかりか、日々の消費のために借り入れを増やした家計も少なくない。それに、コロナ禍で生活は苦しくなった。大統領の支持者でも不満は募っただろう。