ノーベル賞候補者の“海外流出”も起きている

研究力低下の原因は、研究者が安心して研究できる環境を政府がつくってこなかったことにもある。若手研究者のポスト不足など、先の見通しが立たない不安が、研究に専念できない状況を生み出している。研究者の安心感につながるような政策も必要だ。

大学や研究者にも意識変革が求められる。少子高齢化が進み、経済・国際情勢も激変する中、座して待っていても、かつてのように国から研究費は入ってこない。寄付、授業料、産学連携などさまざまな工夫を重ねて、収入を増やす必要がある。

9月初め、光触媒の研究で、毎年ノーベル賞候補に名前が挙がる藤嶋昭・東大特別栄誉教授が研究チームごと中国の大学へ移籍した、と報じられた。衆院議員の甘利明氏はツイッターで「研究者は純粋な探究心が行動原理でより良い研究環境を求めます。半分は国家の責任です。だから私が運用益を研究費に充てる10兆円の大学研究支援基金の創設を提唱したんです」と発信。

井上信治・科学技術担当相も記者会見で「国内の優秀な研究者が日本で研究を継続したいと思うような研究環境を整備したい」と語った。政府には研究現場とも議論を重ね、研究環境や研究力の立て直しに取り組むことが求められる。

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