欧米のように「プロの学長」も作る?

ではどんな大学改革を考えているのか。政府はファンドで支援する大学に、「経営体」になることを求めている。大学を「運営」から「経営」へ転換し、稼ぐ大学に変身してほしいというのだ。

そのために「特定研究大学」に、新たな最高意思決定機関として「合議体」の設置を求める。国立大の場合、現在は学長が重要事項の決定、業務統括の権限を持つ。だが、合議体は大学の執行部から独立し、学長の選考や意思決定などを監督する。合議体のメンバーには、産業界、学術界、行政、地域などの外部人材を充てることが検討されている。

内閣府の有識者会議では、「大学学長経験者の人材プール」を作ることも提案されている。大学内部からだけでなく、国内外から大学経営のプロを学長として選ぶためだ。企業を渡り歩く「プロの経営者」がいるように、大学も「プロの学長」を作るべきだというのだ。これも欧米がお手本だが、実現すれば、日本の大学は大きく変貌する。

「結局は東大や京大だけ」と冷めた見方も

大学や研究者たちは、不確定要素が多いことや、さらなる「選択と集中」につながらないかと不安を抱く。金融市場の動向で、運用益は変わるので、安定的に資金を得られるかどうかは見通せない。ファンドで支援を受ける大学は、ファンドへの資金供出を求められるため、大学が使えるお金が減ったり、運営費交付金が削減されたりすることも心配のタネだ。

研究室で実験中
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内閣府によると、海外の大学ファンド運用者の報酬は成果主義で、億円単位の高額の人もいるという。運用益を出しても、報酬が負担になれば、本末転倒になる。大学の中には「結局は東大や京大などにお金が回るだけで、ウチは関係ない」と冷めた見方も広がる。

一方、国民の側から見ると、財政規律の問題も気にかかる。欧米の大学が寄付金などの自己収入によって大学ファンドを形成しているのに対し、日本は税金頼りでスタートする。説明責任や透明性の確保が欠かせない。

だが、政府の総合科学技術・イノベーション会議が8月末に公表した大学改革やファンドの中間報告は「ステークホルダー」「プロボスト」「コモンズ」など、カタカナ語が多用され、分かりにくい。海外の大学をお手本にしたとはいえ、そのまま英語を使うのではなく、国民にもっと分かりやすく、きちんと説明する必要がある。