あからさまな差別はなくても女性社員は悩んでいた
――アンコンシャスバイアス研修を受けられて、山田さん自身が気づかれたことは?
【山田】(全マネージャーが研修対象になる前の)2019年に僕は受けたのですが「そうだよな」と納得した部分と理解しきれていない部分もあったので、「まずいな」と思って(ジェンダーに関する)本などを買って勉強しました。
僕自身、スタートアップの世界で生きてきて、ハードワークも厭わないマッチョなタイプだったのですが、今はそういう働き方や意識では、企業として持続的な成長は難しい。メルカリはグローバルスタンダードな企業として始まったので、当初からあからさまな差別はなかったのですが、それでも今女性マネージャーのヒアリングをすると、「(男性ばかりの中で)話すのに勇気がいる」「リーダー層に男性しかいなくてロールモデルがいない」という悩みを聞き、構造的な問題があると認識しています。これらは自然に解消されることはないので、改善のためのアクションは必要だと思っています。
マイノリティを登用しない理由を可視化する
――一方で、現在の女性管理職の比率は公表されておらず、何年までにどのぐらい女性管理職を増やすといった数値目標も設けないとおっしゃっていますね。
【山田】数値目標を設定しなくても、今の取り組みをしていけば十分D&Iが推進され、結果として女性管理職30%は達成できると思っています、先に取り組んだ外国人社員では成果が出ているので、まずは数値目標をおかずにやってみようと。一方採用では、採用候補者の何割は女性にしようという内部の目標は作っています。
(D&Iを推進する仕組みとしては)例えばマネージャーへの登用の際、推薦された人が外国籍や女性でない場合は、なぜマイノリティを登用しないのかという理由を書くようになっています。「部署にいない」という理由であれば、部署にまずマイノリティを増やす。昇進を打診する時には、(女性は管理職を躊躇する傾向が強いので)男性が1回だとしたら女性には3回は声をかけるようにもしています。こうした仕組みだけで足りない部分もあると思っているので、「あれもやろう」「これもやろう」という話はしています。
――ジェンダー問題などを勉強され、現状を知るうちに、例えば採用で女性を増やそうと思ってもそもそもエンジニアに女性が少ない、その背景には理系を志望する女性が少ないことに気づかれ、財団の構想につながったのでしょうか?
【山田】僕たちもマイノリティ向けのインターンシップなどをやっていたのですが、そもそも女性を増やすには採用のもっと前の段階から取り組まなければならないと気づいたのです。奨学金は企業としてできないので、今回非営利の活動として財団を立ち上げました。