気づいたらジェンダーギャップ対応が遅れていた

【山田】メルカリ社内でD&Iの最大の課題は当初、外国籍社員、日本語が話せない社員をどうインクルージョン(包摂)していくかでした(現在、メルカリ東京オフィスの約2割、エンジニアの約半数が外国人社員)。海外で事業をしているにもかかわらず、日本企業なのでモノカルチャーだったのです。

その課題に取り組むうちに、昨年になってふとジェンダーギャップの方が全然進んでいないことに気づき、経営層でもその問題を話すようになりました。結果、もっと部署横断的に議論した方がいいということで、CEO直下の組織「D&I Council」を作りました。

僕らとしては外国籍社員の問題もジェンダーの問題も同時並行的にやっていたつもりだったんですが、気づいたらジェンダー不平等への対応が遅れていました。

メルカリ社内で進めているD&Iの取り組みを説明するCEOの山田進太郎氏
撮影=西田香織
メルカリ社内で進めているD&Iの取り組みを説明するCEOの山田進太郎氏

トップダウンではなく現場が腹落ちすることが大事

――メルカリでは2016年に産休・育休中の給与保障や妊活支援などを盛り込んだメルシーボックスという人事制度を導入するなど、子育てと仕事の両立支援制度は整備されていました。ジェンダー分野で遅れていたというのは、女性へのキャリア支援、均等支援の部分だったということでしょうか?

【山田】マネジメント層に女性が増えていなかったんです。2019年から社内でアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を克服するトレーニングはやっていたのですが、考え方はそんなに簡単には変わりません。経営層でもいろいろな考えがあり、例えば女性登用の数値目標に関しても「女性優遇では?」という意見もありました。ただ、議論を繰り返すうちに徐々に経営層の間では「これはやらなければ」と意思統一できていったのです。まだマネージャー、メンバーの間には、いろんな意見がある状態だと思います。

D&I Councilを作ったときに、ぜひやってほしいと言ったことの一つが、各チームでD&Iのセッションをすることです。そこでマイノリティの人たちが抱えている思いが表に出てくることで、自分の中にあった無意識のバイアスに気づく。じゃあ、メルカリはどうやってそれを解消してくのかを議論してもらいたい。

経営陣から「マネジメント層の30%は女性や外国籍の社員に」と言っても、それでは数合わせにすぎず、現場の意識は変わらない。みんなが腹落ちすることが大事です。腹落ち感がないと、女性が登用されても「あの人は30%の人だから」という意識が残る。研修も含めて徹底した議論がなければ歪んだ形になってしまう。