日本社会での女性登用が進まない。政府は「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」としていたが、未達のまま達成目標を「2020年代のできるだけ早い時期に」と変更した。そんな中、メルカリの創業者でCEOの山田進太郎氏が私財30億円で財団を設立するなど気を吐いている。山田氏は「私も最近になって現状に危機感を持ち始めた」という――。(聞き手・構成=浜田敬子)
同じ志を持つ人たちとムーブメントをつくる
今年7月、山田氏は私財30億円を投じて「山田進太郎D&I財団」を設立した。財団名にある「D&I(Diversity&Inclusion)」とは、性別や国籍、宗教など多様な人材が互いに尊重し合い、個人の能力を最大限発揮できる環境を整備していく、という考え方だ。財団では最初の事業として、理系進学を志望する女子高校生に対し、100人規模の給付型奨学金を支給する。その目的は、理系やテクノロジー業界に進む女性比率を高めることだ。
――「山田進太郎D&I財団」設立発表から約2週間が経ちました(インタビューは8月19日)。反響はいかがですか?
【山田】奨学金応募が始まって2週間で、すでに数十の応募がありました。9月末の締め切りまでにはもっと多くの応募があると期待しています。
個人的に活動を手伝いたいという申し出や、高校などの教育関係者などからの問い合わせもありました。自分たちだけで理系の女性の増やすという大きな目的が達成できるとは思っていないので、同じ志を持つNPOなどいろんな人とお互いの強みを活かしながら、一緒にやっていきたい。ムーブメントにしないといけないので。
――財団活動に、山田さんはどのぐらい時間や労力を割いていらっしゃるのですか?
【山田】仕事の時間は使ってないのですが、コロナで会食が減っているので、その時間などを充てています。ボランティアで関わってくれている元メルカリ社員やメルカリ社員、業務委託している(NPO法人の)ETIC.の人たちが実務的なことは担当してくれるので、僕は僕しかできない取材対応やイベントへの登壇などを担っています。
――財団設立の会見でも言及されていましたが、山田さん自身はメルカリ創業前にサンフランシスコに滞在されていた経験から、シリコンバレーの企業の強さの源泉は多様性だと認識していらしたと。メルカリでもトップとして早くからD&Iの必要性を意識していたということですが、一方で、メルカリの社内では3年前に社員の間からD&Iを考える草の根的な“部活”が始まっています。トップの意識はあったけど、現場から見たらD&Iが根付いていなかった。トップと社員の間の浸透に対する認識に温度差があったということでしょうか?