期待と不安のワクチン接種当日
さて、ワクチン接種当日。空は晴れ間と雲が交じり合い、それは私の心中の期待と不安を象徴しているかのようであった。接種の時間は9時。遅れては大変と6時には起き出し、朝食を食べ、7時過ぎには家を出た。
東京駅の丸の内南口を出ると、スタッフと思われる女性が大規模接種会場に行くバス停の案内パネルを持っていた。それを見つつ、はとバスが発着する場所に向かう。南口から1分とかからない距離だ。そこから、大手町にある自衛隊東京大規模接種センターに向かう直通バスが出ているのだ。乗車する前には、女性スタッフに消毒をしてもらい、乗り込む。
バスの運転手さんは「おはようございます」と明るく、気さくな感じだ。7時45分出発。周りを見回すと、20代の若者から50、60代と思われる中高年までさまざまな人が乗っている。私を含めて十数人といったところだろうか。
運転手さんから「安全運転に気を付ける」「安全のためにシートベルトを」のアナウンスがあったあとバスは出発。はとバスの発着場から出たこともあり、観光と錯覚してしまいそうになった。バスは皇居周辺を通っていく。南北朝時代の武将・楠木正成の銅像の横を過ぎ、二重橋を前に見てバスは進む。途中、東京五輪開催中のためであろうか、道路が封鎖され、警官が厳重警備していた箇所もあった。
ユニークなスタッフに緊張が解ける
出発から12分で大規模接種センターに到着。渋滞はなく、大幅な遅延もなく、まずは一安心だ。バスから降りるとスタッフに誘導され、会場に向かう。4分ほど歩くと会場前に着く。私の接種時間は9時からであり、早く着き過ぎたようだ。近くにいたスタッフさんに「早く着いたので、外で待っていたほうが良いでしょうか?」と尋ねると、「早く打ってくれることもあるので、どうぞ中へ」との答えが。
受付書類を提示し、建物の中に入る。建物の部屋の中には、椅子が並べられており、その椅子には黄、緑、青、ピンクの札が付けられていた。指定された色札の椅子に座るのだ。ちなみに私は黄色だった。人と人との距離は1メートルくらいだろうか。しかし、座ったと思ったら1分も経たないうちに、起立して別の部屋に誘導される。
その途中、年配の自衛官と思われる女性がいて「さぁ、これから大変ですよ。立ったと思ったら座ったり。座ったと思ったら立ったり。何度も繰り返します。大変、大変」とユニークな声音で人々を誘導するのに出会う。ちょっとした漫談を聞いているようだ。緊張していた人はここで少し緊張が解けるかもしれない。
その後は、女性自衛官の言っていたとおりになった。いくつかの部屋に通され、椅子に座り、またすぐに別の部屋に移動する。
エレベーターに乗ることもあり、その時には「壁に向かい乗ってください」のアナウンスが。おそらく、密室で人と人とが向き合うことによって起こる感染リスクを下げるためだろう。