「給料よりも大切な理由」があれば転職を止めない
2つめは、給料は下がるけれど、やりたいことが見つかって転職しようとする時です。
産業医として、たくさんの働く人たちと面談をしてきた経験から言えることは、転職して1年以内にメンタル休職する人の中には、給料アップのために転職したもののうまく行かなかった人がそれなりにいるということです。
給料アップを目指すことを悪いとは全く思いません。しかし、増加した給料に満足や喜び等の刺激を感じなくなり、その額がこれだけハードに仕事しているのだからとか、このストレスに耐えているのだから“当たり前”となってしまった時、給料のために転職した人は、とても弱いです。
反対に、自分のキャリア形成のため、この会社で何について学びたい、身につけたいなど、給与以外の目標のために働く人は、ハードな仕事やタフなストレスにもそれなりに対処できていると感じます。
転職先での自己成長やその後の可能性が広がること、プライベートな生活の充実が実現できることなど、お金以外の前向きな理由があれば、転職を止めることはありません。
メンタルが原因の休職者に復職を勧められない時
3つめは、メンタルが原因の休職者が元気になってきて、社会復帰を考えた時のケースです。転職を考えると平気なのに、復職を考えるたびに症状がぶり返してくる。または、実家や別荘などのある他県で療養して回復するも、会社のある東京に帰ってくると、不眠や抑うつ等の症状が再発することを繰り返すということがあります。
働く人がメンタルヘルス不調になってしまった場合、原因のほとんどは職場に関連することです。社会人は、起きている時間の半分以上を仕事に関連することで過ごしていますので、プライベートで別れなどの特別な原因がない限り、不調の原因は仕事関係であることが多いです。
仕事上のミスや長時間労働、上司や人間関係など、原因が明らかな時は、体調が整った上で、今後はどのように対処していくか考えることができます。
それでも復職を考えると症状が再発してしまう場合は、本人が気づいている以上の不安やストレスを職場に感じている可能性が高いです。本能的に対処できないと思ってしまうような環境に、健康状態の悪化の危険を冒してまで復職することには、医者としてあまり賛成できません。