退職理由を「人のせい」にするのは、自己反省が足りない

一方、扱いが難しいのは、本人が退職理由を他人のせいにしている時です。

この会社は上司や先輩が全然教えてくれない、私が仕事ができないのは会社のシステムややり方が(前職と)違うからだ、私は悪くない……。

産業医面談で言うだけならばいいのですが、同僚にも言い出すことがでてきてしまうと、それが職場での不協和音の原因になり、さらに状況が悪化するケースもあります。

もちろん、このような理由が過度なストレスになり、精神的に病んでしまうのであれば、退職を止めることはありません。むしろ、やめれば治りますから、医学的には安心できます。

職場で物事がうまくいかない時、他人のせいにしてしまうことは、自分の精神衛生を保つ上で仕方ない面もあります。しかし、退職する理由までも他人のせいでは、自己反省がたりません。自分がどうあるべきか、今後はどう対処すればいいのかを考えることなく過ごしていては、同じことを繰り返してしまいます。

そのような社員は、自社にふさわしい人材なのか、この退職は肯定するべきか思いとどまらせるべきか、いつも悩んでしまうのです。

20年ほど前に比べ、転職は比較的容易にできるようになりました。それでも一つひとつの退職、転職には、個々人の大きな判断が必要となります。産業医の私は、各自の判断を尊重しつつもいろいろ思わずにはいられないのが実情です。

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