抗争の年間費用は約5億円

沖縄の組員が熊本刑務所に収容されるなら最低限の交通費で済みますが、仙台刑務所や旭川刑務所なら飛行機代だって馬鹿になりません。級が上がり、毎月一回、面会ができるようになったとする。幹部や奥さんなどのアゴアシ代(旅費・交通費)だって相当です。

弁護士費用もかさむし、彼らが体をかけた(命をかけた)仕事に関して報酬も払わなきゃいけない。それを考えたら、武器なんて、必要経費にも入らないくらいで。

【溝口】そうでしょうね。

溝口敦、鈴木智彦『職業としてのヤクザ』(小学館新書)

【鈴木】一度、大きな抗争を経験した暴力団のトップに、抗争の経費がいくらかかるか聞いたことがあるんです。そうしたら、年間5億円と言っていた。妥当です。

例えば襲撃に備えて防弾車をつくるために、自分たちで海外に出かけ、ピストルを撃って車を潰したりする。日本に防弾車なんかありませんから、自分たちで仕様をつくる。それに、潜っているヒットマンに渡す経費が馬鹿にならない。

ターゲットを殺すためにずうっと張り込みして、つけ狙い、一瞬のチャンスを待つのですから、シノギなんてしていられません。そのための住居だとか、車だとか、食事だとか、さまざまな費用がかかる。ヒットマン一人につき、月に20万円かかったとする。10人いたら200万円です。実際はもっと人数がいるはずです。そして何年続くかわかりません。

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