ヤクザが「兄貴分の女」に手を出すとどうなるのか。ノンフィクション作家の尾島正洋さんは「私が取材したヤクザは『そんなことをしたら手を切り落とされても文句は言えない』と語っていた。過去には、親指を除く人差し指から小指までの4本をすべて切り落とされたヤクザもいたようだ」という――。(第2回)

※本稿は、尾島正洋『俺たちはどう生きるか 現代ヤクザのカネ、女、辞め時』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。

暗い部屋に座って悲しむ若い男
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元妻の子ども二人を射殺した暴力団組員

暴力団組員が女性をめぐって起こす事件も数多い。男女トラブルに暴力団組員が関与、介入することで事件に繋がっていくこともある。果物の栽培が盛んな、緑豊かな山々に囲まれたのどかな地域で2020年5月、銃声が鳴り響いた。

長野県坂城町の一般住宅で男女3人が倒れているのが発見され、いずれも死亡が確認された。亡くなったのはこの家の22歳の長女と16歳の次男で、この住宅に押し入った山口組系幹部の男(35歳)が死亡していることも確認された。男はベンツで乗りつけて窓ガラスを割って押し入り、直後に長女と次男を射殺。自分もこめかみを撃って自殺したと見られている。

山口組系幹部の男は、離婚した30代後半の元妻と、この家の長男が職場の同僚だったことから二人が交際しているのではないかと疑っていた。銃撃事件の2日前には長男に対して殴る蹴るの暴行を加え、傷害容疑で逮捕状が出ていた。

元妻との関係を疑われた長男は、再び襲撃されることを恐れて自宅を離れていた。山口組系幹部の男は長男が不在の住宅に押し入ると、まだ高校に入学したばかりの次男ら、まったく無関係の家族を射殺し自殺するという凄惨せいさんな事件を引き起こした。

離婚したとはいえ、「ヤクザの女に手を出したな」との邪推からなのか、復縁を望めないとの悲観からだったのか、死亡してしまったためその動機が解明されることはない。