年収の高い人に、20年も30年もいられると困る
日本には年功序列の企業が多く、定期的に給与が上がり、社歴や年齢を重ねるごとに年収が高くなるのが一般的です。日本はすでに超高齢化社会に突入しているため、現在は、多くの企業で高年収の中高年者が溢れている状態です。
2013年には法改正が施行され、「高年齢者雇用安定法」という法律ができました。希望すれば、企業は2025年には65歳まで雇用することが義務になったのです。
さらに政府は、希望すれば70歳まで働き続けられる制度を推進しており、2021年4月から企業の努力義務とすることを決めました。
高齢者がいつまでも働き続けられる社会。それはそれでよい面もあると思います。年金の支給開始年齢が引き上げられ、そうでなくても年金だけで暮らしていくのが難しい老後を考えると、希望の光に感じる人も少なくないでしょう。
しかし、どんな企業も人件費には限りがあります。企業としては、高いお給料の人に65歳や70歳になってもそのまま会社にいられても困るのです。40代以降の年収が高い人にあと20年も30年もいられたら困るので、早期・希望退職者を募っているのです。
パフォーマンスの高い若手ほど会社を辞めてしまう
これは人件費に限った話ではありません。若手のモチベーションにも大きく影響します。年功序列の会社では、年齢や社歴が給与を決定する重要な要素です。若手がどんなにパフォーマンスを上げても、年収が大きく上がることはありません。
若手は頑張っても年収が低いのに、どの企業にもパフォーマンスは低いのに年収だけは高いシニア社員がたくさんいたりします。
そういう人は、若手からすれば、仕事へのやる気もなく、ただ定年を待っているだけの状態に見えます。なのに、自分の何倍もの年収をもらっているのです。
「なんであのオッサンのほうが年収高いんだよ!」
ストレスや不満がたまり、パフォーマンスが高い若手ほど会社を辞めていきます。少子化が深刻な日本では、一部の人気企業や有名企業以外は、どこも新卒の採用に苦戦しています。せっかく採用できた優秀な若手を手放すのは大きな痛手です。
(一方、そう思わず、辞めない若手も考えものかもしれません。それでイノベーションが起こせるのか、疑問です。いずれにせよ「よい状態ではない」ということです)。
若手の給料を上げ、中高年の給料を下げる
こうした状態を防ぐには、若手の給料を上げ、中高年の給料を下げるしかありません。でなければ、人件費が爆発して経営破綻します。これが日本のサラリーマンの、特に中高年の年収水準が落ち、黒字リストラが急増している理由です。
ここ数年、私の会社にも「年功序列をやめたい」「給与制度を変えたい」「40代後半~50代のお給料を適正にしたい」「若手の給料を引き上げたい」というコンサルティングのご依頼が非常に増えています。
実際に下げるかどうかはともかく、現状の給与制度を変えないと会社を維持できないというのが、今、多くの企業が直面している極めて深刻な問題なのです。